2013年10月16日(水)、まとふ(matohu)が2014年春夏コレクションを発表。テーマは、「尽くし」。
「尽くし」とは、一つのテーマをもとにいろんな物を取り集めることでひとまとめに見せ、祝賀的なイメージを喚起させる美意識のこと。以前は着物の世界を中心に多くみられる表現だったが、最近日常の中で目にする機会は少なくなってきている。それをファッションに取り戻したのが今季のコレクションだ。
序盤は伝統的な「貝尽くし」に始まる。ストライプ模様との組み合わせは、ジャカードの長着を爽やかに演出した。そして、まとふのモダンな解釈で編み出されたのが、クランベリー、ラズベリー、ブラックベリーがミックスされた「ベリー尽くし」だ。品の良さを重視した落ち着きのあるトーンのシャツドレスに配したことで、遊びを取り入れるのは柄までに止められている。「ブロック塀尽くし」では、透かしのブロック塀模様を羅列することでチェックのように見せた。普段目にしている物も、集めることで新鮮かつ楽しい感覚を呼び起こすと教えてくれる。
終盤は、縦糸と横糸で異なる色を用いた、華やかな「色尽くし」に。ブランドには珍しい蛍光色が登場。ピンクのチェック柄のジャケットに、蛍光イエローのフレアスカートと、大胆な色合わせへの挑戦が感じられる。ディテールでは、細かなギャザーを利かせたフリルが目を引いた。トップスの首元に配せば、まるで存在感のあるアクセサリーか、はたまた一斉に咲き誇る花々か。また、始めて男性モデルを起用したことも特筆すべき点だろう。ファーストルックには、色だけ変えた揃いの長着を着用する男女を選んでいる。性別を超えた人間的な輝きを表現したい、という思いがブランドの根底にあること、そして顧客の4割が男性であることがメンズを登場させた理由だという。
「テーマを『尽くし』にしたのは、震災もあって、これから東京オリンピックとかいろんな形で世の中がちょっとずつ変わり始めてる時代に入っていこうとしている今、その中で贅沢をするのではなく、手近な物を集めて人に喜びを与えるような物が、自分たちの中でしっくりきているから」
デザイナー、堀畑裕之と関口真希子が見せてくれたのは、心を豊かさへと導いてくれる、ささやかな「心尽くし」のコレクションだった。