ミキオサカベ(MIKIO SAKABE) 2014年春夏コレクションが、デザイナー坂部三樹郎とリトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)の山縣良和が主催で、渋谷パルコミュージアムで開催中の「絶命展」で発表された。
イメージはジブリ作品『風の谷のナウシカ』の「腐界」や「汚染」だ。坂部三樹郎は「ナウシカの世界と同じで、乗り越えて進化することが重要だなと思います」と語る。ファッション業界全体の流れとはまた違う独特の変貌を遂げた、原宿のロリータファッションやゴスロリファッション。西洋にはない、「異形」や「奇形」ともいえる原宿カルチャーとナウシカをリンクさせ、日本のファッション性のさらなる進化を表現した。
会場には、ナウシカの物語中に出てくる汚染された世界「腐界」を表現したようなセットが用意され、ショー中は終始、作中の挿入歌「王蟲との交流」が流れる。ファーストルックで現れたアニメに登場しそうなツインテールのモデルを包み込むのは、優しいレース。レース使いはこのコレクションの特徴でもあり、ブルゾンやコルセットなど、本来レースとは真逆の重量感ある素材で作られるアイテムをレースで創ってみせた。
メインテキスタイルを挙げるならば、ポップに描かれたファンタジックな犬だろう。素材感も相まって浮いているように見えるハートのモチーフも、日本特有の「少女性」を描く一つの要素として使われた。
コレクションの中で2体だけ登場したメンズのルックには、数シーズン続けてきたジェンダーレスな表現は見られないが、凛とした男っぽさも感じられない。力強いセットアップスタイルかと思いきや、インナーにはアニメのキャラクターが描かれたプリントシャツがレイヤードされ、コートには『風の谷のナウシカ』に出てくる巨大な昆虫「王蟲(オーム)」を模したような付け襟が。ある種の「気持ち悪さ」すら感じるミスマッチ感が、今季のミキオサカベの狙いの一つなのだろう。
坂部三樹郎は「可愛いの語源は可哀想からきています。可愛いけど"可哀想"、可愛いけど"気持ち悪い"など色々な感情が混ざっているものと、"少女性"とを表現したかった。」と語る。確かにこれらの表現は、ヨーロッパのリュクスなファッション界では有りえない、日本のファッション性が織りなす独特の技だ。