ポール・スミス(Paul Smith)の2022年秋冬メンズコレクションが発表された。
今季のポール・スミスが着想源としたのは、非ハリウッド系のいわゆるアートハウス映画、その眩いばかりの映像表現である。クラシカルなウェアを基調としつつも、ヴィヴィッドな色彩が華やかな表情を織りなしてゆく。
コレクションは、映画のスタイルの変遷を反映して3つの色調を軸にまとめられている。1930年代から60年代にかけてのセピアやモノクロームの映画、カラー映画、そして1960年代から70年ごろにかけて興ったニューシネマ──これらを映しだすかのようにして、グレーやブラウンなどの落ち着いたカラーから、存在感のあるグリーンやレッド、そして鮮烈なグラフィックやパターンまで、豊かなカラーのグラデーションが繰り広げられる。
ヴィヴィッドな色彩によるジグザグのパターンは、デイヴィッド・リンチやウォン・カーウァイといったアヴァンギャルドな映画監督にオマージュを捧げたもの。オープンカラーシャツ、クルーネックやタートルネックのニット、あるいはシューズなど、いずれもベーシックなフォルムを基調に、サイケデリックで存在感のある色彩をのせた。
眩暈を引き起こすかのようなサイケデリックな色彩は、ブランドを象徴する花柄も染め上げる。シャツはもちろん、コーデュロイのブルゾンやカーゴパンツなどを、ブラックを基調にグリーンやオレンジといった鮮やかなフローラル柄で彩っている。
鮮やかな色彩やパターンに対して、チェック柄はむしろトラッドなムードを添える。端正なチェスターコートやテーラードジャケット、カジュアルなステンカラーコートやダッフルコート、カーゴパンツなど、異なるテイストや素材にわたって展開されつつ、それらを縦糸のようにしてまとめている。