ディオール(Dior)の2014年春夏コレクションは、ラフ・シモンズが考える時代の最先端を行く、全くニュータイプの女性像を表現したものだった。「どこから来て、どこへ向かているのかがいまひとつ想像できない、変化と可能性に満ちた新しい世界に存在する女性たちを表現したかったのです」とラフ・シモンズは語っている。
ショーの会場は生花と造花を織り交ぜた装飾により、まるで秘密の楽園のような空間で披露された。それは、人工的なものと本物を特徴的にMIXしながら、その性質を変容させる実験的な概念を落とし込んだコレクションそのものともリンク。
洗練と野性的という対極にあるふたつを持ち合わせる新しい種類の女性たち、それがラフ・シモンズの言うニュータイプ。ウエスト部分でカットされたバージャケットは、プリーツスカートのように見せたショートパンツと一体化し、面白いギミックを生んでいる。
まるでシダの様な自然のフォルムを人工的に落とし込んだコスチュームジュエリー、世界中を飛び回る“トラベラー”のワッペン、未来の色の名前が書かれたドレス、大きく背中がカットされたメンズシャツを変形させたドレス、ランタンシルエット、16種類もの異なるプリーツ……。めくるめく「トランス・ディオール」の世界が繰り広げられた。
なんとフィナーレには、それまで登場した47ルックとは全く別の、29ルックを着たモデルが行進。ブラックとシャリ感のあるフラワー・ジャカードで構成された。メゾンのコードに忠実でありながら、既成概念を覆すことで、予測不能で謎めいた女性像をセンセーショナルに表現した。