ヨシオクボ(yoshiokubo)の2022年春夏コレクションが、2021年9月2日(木)に発表された。
「ミリタリー」とはいま主流をなすテイストのひとつである。それでは、日本に独自のミリタリーとは? 今季のヨシオクボがテーマとした「ウォリアー・モンク」──武装した僧兵の謂いである──とは、そのひとつの解釈にほかならない。
僧兵の衣裳が戦いのためならば、その役割はひとつに身を守る機能性である。それを現代のファッションに昇華するのが、スポーティーなムードだ。頭まで覆うフーディを備えたフルジップのジャケットや切り替えを施したプルオーバーは薄く軽快な機能素材に、あるいは着物を彷彿とさせるガウンは透け感のあるファブリックでアップデート。また、ブルゾンやパンツの随所にはポケットを配し、機能性とデザインのアクセントを設けている。
僧兵は、相手を視覚的に威嚇すべく、誇張されたサイズ感の衣裳を身にまとったという。これはそのまま、オーバーサイズへと今の文脈に接続。とはいえ、ドロップショルダーとリラクシングな身幅ながらも威圧的な印象はなく、軽やかな素材感と相まって雰囲気はあくまで軽快である。
レイヤー状の構造も特徴的だ。しかしそれは身を守る重厚さから解き放たれ、もっと軽やかに揺らめく。ブルゾンやシャツ、パンツに重ねた網飾りは、光沢を帯びた質感が古めかしさを払拭。スポーティーなパンツも、流動的な形状で大胆にメッシュ素材の切り替えを施した。
そのように伝統を現代へと軽やかに翻訳するなかで、バンダナ柄のブラウスはかすかに土着的に香りたつ。また、シンプルなフォルムのワンピース、プルオーバーやショートパンツには、絹布に水墨をのせたような静謐なファブリックを使用した。
カラーは、なるほど、陰りに沈むようなブラックや土を思わせるキャメル、深みのあるダークグリーンといった落ち着きのある色みが一方にある。しかしその他方で、鮮やかなレッドやスカイブルー、パープルなどが、僧兵の衣裳というややもすれば重苦しさを孕みかねない要素を払拭するかのように、ウェアを彩っている。