アメリカ・ロサンゼルスを拠点としたブランド「チャンルー(CHAN LUU)」。レザーベルトに、天然石やパールなどのジュエリーを組み合わせたブレスレットを、何重にも巻くアイコニックなスタイルが海外のセレブリティをはじめ、日本の有名人にも高い人気を誇っている。今回は、デザイナー チャン・ルーのバックグラウンドやデザイン、クリエイションへの想いに迫った。
インタビューが行われたのはバーニーズ ニューヨーク銀座店。待ち合わせの時刻となり、店内へ入っていくと、フロアの一角にできた人だかりが目に入った。覗いてみると、チャンルーの新作先行発売が行われていたコーナーに、デザイナーであるチャン・ルー本人が立っていたのだ。チャンは、一足早くアクセサリーを求めて店に訪れたファンたちに囲まれ、辺りは撮影会と化していた。新しいデザインが出る度に買い求める熱心なファンが多く、 1つ買うと何個も欲しくなってしまう。そんな不思議な中毒性がチャンルーのアクセサリーにはある。
はい。日本は、年に5回は訪れています。旅はデザインのインスピレーションを求めるための大切な要素。私のデザインは、一貫して各国の伝統文化からインスピレーションを受けています。それを私なりの視点でモダンなアレンジを加えて、今日のファッションへと昇華させています。
その通り。私は、彼らの伝統技術にモダンな解釈を加えますが、必ず敬意を示すことを忘れません。私の全てのクリエイションは、過去に何らかの結びつきを持っています。過去なくして未来は無いのです。私のコレクションが支持して貰えるのは、その背景に歴史や物語があるからだと思います。
現代の人々は、コンピューター片手にものすごい速さでものごとを進めます。そして、それは加速していく一方。それでも、だからこそ人々は、ハンドメイドの温もりを心のどこかで求めていると思いません?そんな現代を生き向く人々に歴史との結びつきや、愛を提供していくのがチャンルーの作品たちです。
エイジレス、ジェンダーレスなアイテムであることが私のコレクションの特徴の1つ。8歳の子供から、88歳のお年寄りまでがアクセサリーを手に取ってくれるんですよ。ロックスターからムービースター、おしゃれ感度の高い人からそうでない人まで。本当にバラエティに富んだ顧客層です。
行けるとこならどこへでも。最近ではアフリカ、去年はイスタンブールに行きました。どこに行ってもその土地の文化からインスピレーションを受けます。
もちろん。特に若者達の文化に刺激を受けますね。ファッションのみならず日本人のクリエイティビティーには圧巻です。どの国へ行っても日本のような装いは見かけませんし、みんな自分だけのスタイルを持っているように思います。
築地の魚市場に行った時です。品物の1つ1つが丁寧に並べられていて驚きました。日本の人々は、細部にまで意識を配り、物をどう見せるかにこだわりますよね。日本人は最も洗練された国民なのだな、と確信しましたよ。
日本では男性のファンも多いんですよ。日本の男性は、ファッションへの意識がとても高く、少しフェミニンな要素が強いのも特徴。海外だとゲイのように見られるのが嫌だといって変に意識してしまう人が多いのですが、日本人はいろいろな価値観を受け入れてくれます。だから私のデザインも気に入って貰えるのではないでしょうか。
祖国ベトナムを離れ、アメリカへと渡り、バイヤー、ショップオーナーなどデザイナーとして成功を収めるまでに、ファッション業界で様々なキャリアを積んできたチャン・ルー。彼女の人生自体がまるで旅のよう。
これまで、制作から販売に至るまで経験してきたので、ファッション業界の裏も表も全て知っています。でも私は根っからのクリエイター。結局はデザイナーの道を進むこととなりました。よく人に成功の秘訣は何か?と聞かれますが、理由はそこにあるのでしょうね。
もちろん。デザインする際、”人々がどうしてこれを買うのか”という疑問をアクセサリーを実際に付けてみながら頭に浮かべます。店頭にその値段で売っていて買うかどうかと。これはバイヤーとしての視点ですよね。貧しい人々もたくさん見てきたので余計にそういう面には敏感です。
アクセサリーの方で最初に成功しましたが、そもそもの夢は洋服のデザイナーでした。
でも一度デザイナーになれば、何だって作れます。今日のドレスもそうなのですが、アパレルのラインは数年前から展開していて、今ではライフスタイル全般のアイテムを手掛けています。それもすべてフタッフたちの手作業によるものですよ。クリエイティビティーは最終的に全部連結していくと私は考えています。
料理や絵を描くことだって知らぬ間に全て1つのアイデアになる。だからどのアイテムのデザインにも関連性があるのです。例えばアパレルの方にも、アクセサリーと同じように、ビーズを多用しています。
それは、やはり100%ハンドメイドでコンテンポラリーであること、そして先の話にもありましたが、どこかで過去と 繋がっているようなもの作りです。
新旧の融合への憧れは、フランスで、ピラミッドのオブジェがルーヴル美術館の前に建設されたお披露目の日に立ち会ってからだと思います。その時モダン な建物と古代の建築の一見不思議な組み合わせの魅力に取りつかれたのです。おかしな取り合わせだけどそうじゃない。 なぜかしっくりくるのです。古い物は新しさに温かみを与えるのでしょう。
ええ。ペルー、イスタンブール、トルコ、アフリカ…どこの文化でも通用します。お客さんの中に度々、”あなたのアクセサリーをつけると、あなたと一緒に旅行に行っているような気分になるの”と言う方がいます。今日はアフリカ、明日はトルコといった感じに。
(世界貿易センターの)シモーネ・チプリアー二が加わり:
彼女のアクセサリーにはストーリーがあって、アクセサリーを集めていくことで、新しい国に出会える可能性、新しい文化に触れる可能性を秘めているんですよ。チャンルーがお客さんに物語や旅をプレゼントするように。