フェンディ(FENDI) 2021年春夏メンズコレクションが、ミラノファッションウィークにて、ウィメンズと共に発表された。
今シーズン、コレクションに反映されたのはフェンディ家のパーソナルな物語。ローマにあるフェンディ生家にまつわる大切なストーリーを、フェンディ創業家の3代目にあたるシルヴィア・フェンディの目線で、抽象的に描き出していく。シルヴィアの瞳に映る思い出の光景、そして胸に秘めた想いをとじこめた、どこかノスタルジックなコレクションに仕上げている。
ファーストルックを飾ったのは、“窓”をモチーフにしたユニークな2ピース。シャツ×センタープレス入りの端正なパンツには、光を浴びることで現れた窓の枠組みや木々の“シャドウ”を繊細に表現している。それはシルヴィアの瞳に映った、生家での光景なのだろうか?どこか朧げなカラートーンでプリントしたことで、まるで彼女の記憶の中を覗いているかのような、不思議な感覚に陥っていく。
同時にキー素材となった、軽やかなシアー素材も、ノスタルジックなムードを強める一因だ。本来は華やかなモチーフであるフローラルを、モノクロで転写したようなルックは、シアー素材も相まって、今にも消えてしまいそうな儚げな表情に。一方で足元は漆黒のフットウェアを取り入れることで、メリハリのあるカラーコントラストを描きだしている。
スタイリングは、ハーフパンツを取り入れたフレッシュな着こなしが主流に。足元には決まってミドル丈のソックスが合わせられていて、それはコレクションに登場したニットウェアと同様に、繊細なレース編みで丁寧に表現されている。
こうした高いクラフトマンシップは随所に溢れていて、ブランドのルーツであるレザーを使用したルックがその好例。本来重厚感のあるブラックレザーのロングコートやパンツは、計算されたカッティングや縫法によって、風になびいているかのような、豊かなドレープを描くほど。また“家”の内部にあるインテリアに着想を得たという花の刺繍は、シンプルな白シャツの上でさり気ないエレガンスをもたらしている。
コレクションを彩るパレットも、シルヴィアの瞳に映し出された家の色彩をイメージ。フラクセンの自然な小麦色、乳白色、ハチミツ色。そして鏡に映ったスカイブルーとカーディナルレッドが、アクセントカラーとしてコレクションにリズムをもたらしている。