エズミ(EZUMi)は、2021年春夏ウィメンズコレクションを発表した。
今季のインスピレーション源となったのは、建築家・隈研吾。ビジュアルの撮影も、隈研吾が設計した「サニーヒルズ」を舞台に行われた。
以前より建築に造詣の深いエズミのデザイナー・江角泰俊が、隈研吾の建築や構造、デザインコンセプトをリサーチし、隈研吾本人と対談も実施。“キシキシ”などのオノマトペを用いながら、まだ形になっていない概念やその土地、素材、技を組んで作り上げていく、隈研吾の“負ける建築”の構築の仕方からデザインのヒントを得た。
その中で、「部分から全体」を構築していく隈研吾の建築へのアプローチをエズミの服作りのプロセスに反映。襟という1パーツを起点に、服を構築していく試みを実践した。
象徴的なのは、いくつもの襟を交差させるようにして組み上げたドレスだ。全てのパーツはボタンによって固定されており、ボタンを外して解体していくと襟のパーツに戻る。平面的な襟のパーツを組んでいくことで完成した1着の立体的なドレスは、ある種即興的な手法で作られたものだともいえるが、“部分から全体へ”のデザインプロセスを体現した、建築的な服だといえる。
「サニーヒルズ」に用いられている建築技法の、木材を交差させて組んでいく「地獄組み」ともどこか呼応しているかのようだ。
また、テーラードジャケットやチェスターコート、カーディガンの襟はボタンで取り外しが可能。ノーカラーの上着として着用することができる。また、トレンチコートは、上下で“解体”し、それぞれショートジャケットとドレスとして、単体で着ることもできる。
建築とも相通ずる、手仕事の質感やクラフトマンシップを感じさせるデザインディテールにも注目だ。竹細工の手法として用いられる「やたら編み」のレースは、ブラウスの袖やジャケットの袖口、襟にあしらわれ、温かみのある表情をプラス。
“絡まる”という言葉に端を発する“からみ織”は民族調のドレスやブラウスにパネルで配し、ハシゴレースとともに繊細な柔らかさを添えた。その他、マクラメレースのベルトや、フリンジを配したカットソーなどもまた、クラフトの手触りを感じさせるピースになっている。
カラーパレットは、“木”を想起させるナチュラルなベージュや柔らかいホワイトを基調に、柔らかなコーラルピンクや“葉”のようなグリーンをプラス。グリーンのギンガムチェック地で仕立てたスカートやブラウスは、よく見ると途中からボーダー柄と地続きになっており、アシンメトリーな仕立ても相まって視覚的な効果をもたらす。
エズミの得意とするサイドプリーツのスカートやブラウスは、多彩なバリエーションで展開。粗野な質感の表情豊かなリネンとつややかな化学繊維といった、対照的な素材を組み合わせたスカートやブラウス、パリッとリジッドな質感のデニムで全て仕立てたスカートなどが登場する。柔らかな色彩のチェックプリーツを両サイドに配したドレスは、背中にクロスストラップをあしらい、センシュアルに仕上げた。
尚、2021年春夏コレクションの発表にあたり、エズミは「マターポート(Matterport)」による3Dポートレイトショーをオンライン上で配信。「サニーヒルズ」の建物内に佇むモデルを3Dで360°撮影し、映像で立体的に再現した。映像の中の空間を歩いているかのような臨場感とともに、服の細部や建築の構造を見ることができる。