コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)は、2020年春夏メンズコレクションを、2019年6月21日(金)にフランス・パリで発表した。
今季は、イギリスの小説家、ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』がテーマ。ヴァージニア・ウルフが生涯モットーとした“変革”と“開放”は、ブランドの精神とも相通じている。ジェンダーを直接的に描いた『オーランドー』では、男性として生まれた青年が女性に変身し、女性として生きる歓びに目覚めていく。
また、コム デ ギャルソンは、ウイーンの国立オペラ座150周年記念に上演されるオペラ『オーランドー』の衣装を担当。本コレクションから始まる一連のアイディアは、9月に発表されるウィメンズのコム デ ギャルソンのコレクションを“第2幕”とし、オペラ座での上演の“第3幕”で完結する。
生演奏のドラムソロで幕を開けたショー。ゆったりとした優雅な音楽が始まると、ロングジャケットにワンピースを纏ったモデルが登場した。ショートボブにセットされたヘアスタイルにメイクアップ、パールのアクセサリーなど、フェミニンな要素によって形作られたその佇まいからは、20世紀初頭の婦人を思わせるクラシカルなエレガンスが漂っている。“ジェンダーレス”という言葉が頭をよぎるが、眼前のルックから放たれる必然的な存在感を目の当たりにすると、わざわざ定義づける必要はないと思い直す。
ディテールを見ていくと、それぞれのピースには、装飾的なパターンメイキングがなされていることがわかる。生地を贅沢に使い、ドレープとともにドレスのような広がりを見せるジャケットや、緩やかなギャザーを寄せ、裾を波打つようなラインに仕立てたデザイン、ボリュームのあるバルーンスリーブを配したブラックのジャケットなど、曲線的で空気を含むような造形が目を引いた。ボトムスも、ひだを重ねたハーフパンツやフリルで構築したワイドパンツなど、柔らかさのあるデザインを揃える。
また、刺繍で表現した風景や、フラワージャカード、きらびやかなロゴを配したファブリックなど、テキスタイルも装飾性を帯びていく。絵画的なプリントや、グラフィカルなイメージにストライプをかけたプリントなども展開された。ショー中盤に登場した赤いストライプの生地は、ラインの太さが異なる生地を繋ぎ合わせてスペクタクルに。袖、襟に大胆にフリルを配したブラウスを中に重ねることで、アイキャッチに仕立てている。
ショーが進むにつれて、フェミニンな表現やデコラティブなフォルムはより一層強調された。ジャケットのウエストはシェイプされ、ワンピースの下に着たブラウスの袖は全てフリルに。ジャケットの身頃を分断して、ギャザーで繋げたようなデザインや、コンテンポラリーなスカルプチャーのようなスカートの、奔放なフォルムからは、優雅さとともにアヴァンギャルドな空気感も感じられる。
ラストに登場したのは、鮮やかな花柄や幾何学柄、グラフィックプリントを配したコンテンポラリーな表情のウェア。歩を進める度にふわりと広がる軽やかな素材のグラフィックプリントコートは、背面をフリルの段が覆う。立体的な幾何学模様のラバープリントジャケットは、フリルを配した部分に切れ込みを入れ、ベルトで吊ったディテールが特徴的。服地の流れを変えることで、動きのあるデザインに仕上げている。