プラダ(PRADA) 2019-20年秋冬メンズコレクションが、イタリア・ミラノで発表された。ウィメンズとの合同ショーとなる今回、テーマーに掲げたのは“ロマンティック ポップビジョン”だ。
今季のプラダのテーマに隠れた“ロマンティック”とは、19世期のヨーロッパで生まれた「ロマン主義」に由来するもの。甘美なイメージが強いワードだが、自由への渇望から生まれたこの社会運動の裏には、未知なるものに対する不安や苦悩も人々の心の中に存在したという。
そこからデザイナーのミウッチャ・プラダが思い浮かべたのは、社会に馴染むことが出来ない“フランケンシュタイン”のような人物像。愛とは?自己表現とは?“フランケンシュタイン”の苦悩に想いを馳せてみる。人気ホラー映画『アダムス・ファミリー』や『ロッキー・ホラー・ショー』のメインソングをバッグミュージックに、ゴシックなムードのショーがスタートした。
ランウェイの始まりは、オールブラックのセットアップから。今季はベルトを使用したスタイリングが特徴的で、ジャケットの上からベルトを複数重ねて、緩急のあるシルエットを演出する。
単色で統一されたルックが続いたかと思えば、雰囲気が一変。ビビッドなカラーをあしらったカトゥーン風のグラフィックが、コレクションに彩りを与える。ジャンヌ・デタランテとコラボレートしたというこのイラストのモチーフとなったのは、ロマン主義をイメージした薔薇や稲妻。そしてもちろんフランケンシュタインの姿も。グラフィックをあしらったシャツには、大ぶりのチャームやチェーンを取り入れて、ゴシックなムードを助長する。
ショーの中盤、ランウェイを占領したのはミリタリーウェアである。愛の救世主“ロマンティックヒーロー”をイメージしたというこのピースには、プラダの得意とするナイロンが取り入れられている。フラップポケット付きのナイロンのスリーブに、ニットの前身頃、肩にはファーをあしらった、“戦闘服”風のハイブリッドなピースも登場した。
ショーのラストを飾るのは、前述したグラフィックをモチーフとするハンドメイドセーターである。手編みで表現された稲妻は、グラフィックの総柄とは相反する暖かみのあるデザイン。その胸には、社会に悩む“フランケンシュタイン”にエールを送るかのように、同じくハンドメイドで作られた真っ赤なハートが添えられた。