神山健治監督最新作、長編アニメーション映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』が、2017年3月18日(土)に全国ロードショー。
物語の舞台は岡山県倉敷市。主人公の・森川ココネは、所かまわずついつい居眠りばかりしてしまうという以外は、ごく平凡な女子高生。そんな彼女が、最近不思議と同じ夢を見るようになる。夢の中で、ココネは機械づくりの国ハートランドの姫・エンシェンとなり、鬼に狙われる王国を救おうとしていた。
2020年、東京オリンピックを3日後に控えた夏の日、事件は起きた。突然、ココネの唯一の家族である父親のモモタローが警察に逮捕されてしまう。毎日、自動車の改造に明け暮れてばかりのどうしようもない父親ではあるが、そこまでの悪事を働いたとは思えない。
ココネは、幼馴染みで大学生のモリオを連れて東京に向かう決意をする。その途上、彼女は自分の夢にこそ、事態を解決する秘密があることに気づく。ココネの夢に隠された真実とは何か、夢と現実を行き来する旅がスタートする。
脚本・監督は、これまで『攻殻機動隊 S.A.C.』『東のエデン』『精霊の守り人』などを手掛けてきた神山健治。緻密に練られたストーリーとリアリティ溢れる本格的SF描写を得意とする神山が、完全オリジナル書き下ろしのファンタジーという新境地に挑む。
発端は「自分の娘に観せたい映画を作りたい」という想い。『ひるね姫』では、いままでのSFアクションやハイファンタジーではなく、キャラクターの個人的な物語にフォーカスしたという。だからこそ、今回の主人公は世界を救うヒーローでもなくロボットでもない、平々凡々な女子高生だ。
神山は「映画を見ているだれにでも起こりうることだと思って作っていました。だれもが思う“こんなふうに行動出来たらいいな”ということを実行してくれるココネを通じて、“意外と行動出来ちゃうものだよ”という気持ちになってもらえるとうれしいですね」と語る。
主人公・ココネの声を担当するのは、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のヒロインを務めるほか、数多くのドラマ、映画で注目を集める女優の高畑充希。自身初のアニメーション映画への参加で、関西出身の彼女が劇中では岡山弁を披露する。
ココネの父親・モモタローには、声優初挑戦となる江口洋介が参加。ココネの幼馴染み・モリオを演じるのは、アニメ「僕だけがいない街」で声優として高い評価を得た満島真之介が担当する。
また、ココネを抱きかかえ、ロボットに変形するサイドカー「ハーツ」のデザイン原案を『ベイマックス』のコヤマシゲトが担当しているほか、音楽に「キングダム ハーツ」の下村陽子、キャラクター原案に『猫の恩返し』の森川聡子、作画監督に『東のエデン』の佐々木敦子と、各部門に豪華スタッフが集結している。
主題歌は、1967年に発表されたモンキーズのオリジナルを、忌野清志郎によく似たZERRY率いるタイマーズがカバーした名曲「デイ・ドリーム・ビリーバー」。その曲を主人公・森川ココネ(声=高畑充希)が歌う。
主人公・ココネの声を担当した高畑充希に初挑戦の声優について、そして自身が演じたココネの魅力をきいた。
ココネ役に抜擢されたときいかがでしたか。
オファーをいただいた時はびっくりしました。自分でいいのかなって。これまで2本ほど声優として作品に出させていただきましたが、あまり向いてないのではと考えていたんです。私の声って特徴がありすぎる気がするから、キャラクターより私の声というイメージになってしまうのではないかと少し不安がありました。
それでも挑まれた理由は。
このお仕事をはじめてから、常に新しいことにチャレンジしたいなと思っていて。こんな感じの役やったなとか、こんな感じの仕事したなという、経験があるお仕事の方が気持ちが楽だなとは思うのですが、せっかくなら難しくてもトライしたいという気持ちでいます。
どのような想いで臨まれたのでしょう。
自分でこうしたいっていう案はある程度持っていましたが、やっぱりアニメ作品は監督のものだと思っています。なので、監督のイメージにどれだけ近づけるかが今回の自分の中のテーマでした。
アニメ声優の初挑戦、難しいと感じられたところは。
普通のお芝居などと違って人対人で話すわけではないので、抑揚の付け方が難しかったです。思っている以上に抑揚を付けなくてはいけないと考えつつ、でも実際は人間って気持ちが動いたときそんなに強弱がつかなかったりして。その帳尻合わせが難しかったです。
でも、ココネはのんびりしたキャラクターですし、あんまりハキハキ音を変えようとは思い過ぎないようにしていました。それがココネらしい声の丸さに繋がったらいいなって。逆にエンシェンを演じるときは、ココネよりももっとカドのある声にしようと心がけていました。
実際に完成した作品をご覧になられていかがでしたか。
なんだか冷静には見れませんでしたね。現実世界のココネと夢の世界のエンシェンの2役で、最初から最後まで自分の声が画面から出てきていることに違和感がすごくて(笑)。とはいえ、やっぱり映像は本当に素晴らしかったです。
アフレコ※1の時もアニメーションはまだ線描きですし、台本だけでは物語の構想が補いきれなかったんです。それに、私自身の勝手な想像で、神山監督の作品はメカっぽいイメージだったのですが、今回はまったく違うお話で。終始手探りの状態でずっと進んでいました。だから、あの場面はあんな風になるんだって思いながら……とにかく画が素晴らしかったです。
※1アフターレコーディングの略。出来上がっている映像を見ながら音声を録音すること。
今回はエンディングも担当されていますよね。それはどういう経緯で決定されたんですか。
私がココネをやると決まってから決定したのですが、最初は不安でした。でも、神山監督からこの歌の意味を教えていただいて歌いたいと思ったんです。
清志郎さんが歌われている「デイ・ドリーム・ビリーバー」の歌詞は、お母さんに向けたもの。だから、ココネである私が歌えば、歌詞の意味がより生きてくるんじゃないか、より明確に母親に向けたラブソングになるんじゃないかと神山監督が話して下さいました。私自身も、もともと好きな曲でしたし、みんなが映画の余韻に浸るエンディングで自分がココネをした意味がもっと出てくるのではと、監督と同じ意見でした。
それに、神山監督ご自身がアニメーション制作中にずっと聴いていたらしくて、主題歌は絶対この曲にしようと考えていたそうです。実際に最後まで作品を見て、見終わってから聴くととても曲が活きてくる感じがしました。バックで流れるアニメーションも素晴らしくて、エンドロール込みで1本の映画だなと改めて感じました。
物語の主人公は、ひるねが特技の平凡な女子高生ココネ。そんな彼女の魅力とは。
ココネの魅力は何でしょう。
何が現れようと変わらず、自分のペースで常に前進する。芯が強いけど強すぎるわけでもなく、我が強すぎるわけでもない。それが魅力だと思います。どんな夢を見ようが、父親が警察に捕まろうが関係なくて、本当にブレないんですよね。
かといって、この物語自体はヒロインの成長物語でもないですし、物語の内容がダイナミックになっても、ココネはごく平凡な女子高生であり続けています。
幼馴染みのモリオや父親のモモタローはどのような印象でしたか。
モリオは、なんとなくココネの手下みたいな印象。モリオ自身は少しだけココネのことを恋愛対象として意識しているかもしれないですけど、ココネは全くそんなことなくて、ずっとモリオを振り回している感じです。それがまたいいところで。
モモタローは、永遠の少年という感じでしょうか。これはモモタローに限らず言えることかもしれませんが、男性って少し夢見がちなところがあったりするじゃないですか。その象徴みたいな人です(笑)。父親としてはちょっとめんどくさそうだな……(笑)。
でも、モリオもモモタローも、物語を経てかわっていった気がします。一歩踏み出せる男らしさが出てくるイメージです。
それはどうしてでしょうか。
ココネの変わらない姿があったからだと思います。モモタローに関しては、彼の心をノックし続けた彼女の変わらない姿勢があったからこそなのかなって。はじめは照れがあったり、斜めに構えてしまっていたモモタローも変化していくんですよね。
高畑さんご自身も、ココネに影響を受けた部分はありますか。
私自身も日常生活の中で、ココネみたいに自分のペースでいられたらと感じました。
芸能のお仕事は周りがみるみる変化していくお仕事ですし、その中で自分を保つって難しいこと。ここ最近の1、2年は私にとって目まぐるしく環境が変化した年でした。だから、より一層それを感じられたんです。
この作品で描かれていた2、3年後の少し先の未来にも、まさにココネじゃないですけど、自分のペースを変えずにいい意味で今と変わっていなければいいなと思います。
◼︎『ひるね姫』ストーリー
夢の中で再会した物語。 すべてを知るめに、私は眠る。
岡山県倉敷市で父親と二人暮らしをしている森川ココネ。何の取り得も無い平凡な女子高生の彼女がたったひとつ得意なことは「昼寝」。そんな彼女は最近、同じ夢ばかり見るようになる。2020年、東京オリンピックの3日前。突然父親が警察に逮捕され東京に連行される。父親の逮捕が信じられないココネは、父親逮捕の謎を自力で解決しようと、幼馴じみの大学生モリオを連れて東京に向かう決意をする。その途上、彼女はいつも自分が見ている夢にこそ、事態を解決する鍵があることに気づく。たったひとつの得意技である「昼寝」を武器に、夢とリアルをまたいだ不思議な旅に出るココネ。それは彼女にとって思いがけず、自分を見つける旅でもあった。
【作品情報】
映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』
公開日:2017年3月18日(土)
監督・脚本:神山健治
出演:高畑充希、満島真之介、古田新太、前野朋哉、高橋英樹、江口洋介
音楽:下村陽子「キングダム ハーツ」
キャラクター原案:森川聡子『猫の恩返し』
作画監督:佐々木敦子『東のエデン』
演出:堀元宣、河野利幸、黄瀬和哉
ハーツデザイン:コヤマシゲト『ベイマックス』
クリーチャーデザイン:クリストフ・フェレラ
色彩設計:片山由美子
美術監督:鮫島潔、日野香諸里
3D監督:塚本倫基
撮影監督:田中宏侍
音響監督:はたしょう二
制作:シグナル・エムディ
原作小説『小説 ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』
作:神山健治
挿絵:よん
定価(本体700円+税)
発売:3月10日(金)予定
角川つばさ文庫
(c)2017 ひるね姫製作委員会