アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)が、フランス・パリで発表した2016年春夏コレクション。今季の背景は、17世紀後半から多くの移民が移り住んだ、イギリス・スピタルフィールド地区にある。様々なスピリットを持ち合わせた人々の中から、メゾンは特に、織物や植物を愛するものたちに目を向けた。
今シーズンのスタイルは、繊細なアレキサンダー・マックイーン流ボヘミアン。流れるようなマーメイドドレス、アイコニックなラッフルワンピースに、美しい花々を添えている。とろけるほどに柔らかなラムレザーに生地と同系色のフラワーを、またデリケートなシルクに大小様々なフラワーを刺繍またはプリント。ボディ中央を基軸として線対照に描かれた模様、あえてフラットにしたエンブロイダリーからはメゾンのクラフトマンシップを感じる。糸の始末はあえてせず儚く。
また、ボディアクセサリーと合わせたスタイリングを提案。首からウエストにかけてジグザグに配されたチェーンに付けられた、パールや植物・昆虫モチーフのチャームは、家宝を守る移民たちのスタイルを投影している。まっすぐに伸びたピアスも同様だ。
ドレスと並んで、今季はデニムも登場。シルクと糸で作り上げたダメージ加工、ダイナミックな立体刺繍が包み込むように全面を覆う。またパキッとしたレッド&ホワイトのミリタリー風ジャケット、刺繍入りレザースニーカーと快活な要素も取り込まれている。生まれ持ったカルチャーと異郷の文化を併せ持ち生き抜いた、かつての移民たちのように、テイストミックスを楽しんでいるシーズンである。