ディーゼル ブラック ゴールド(Diesel Black Gold)がアメリカ・ニューヨークで発表した、2016年春夏コレクション。
メンズウェアの要素を取り込み、力強いコレクションを形作るー-クリエイティヴディレクターのアンドレアス・メルボスタッドが試みたのは、近年のトランスジェンダー(メンズのウィメンズ化、ウィメンズのメンズ化)のトレンドを汲むかのようなコンセプトで、新たなウェアを作ることだった。
しかしコレクションを見渡してみると、確かにその力強さは感じられるものの、あくまでドレスなどフェミニンなアイテムが中心。一見しただけではわからないほどに、メンズの要素は薄められている。メンズウェアを解体・再構築し、フェミニンな形にに落とし込むこと。これこそ彼が今シーズン目指した形だ。
コンセプトは明確ながら、これまでブランドが貫いてきたモードでインダストリアルなイメージは、変わることなくランウェイ上で表現されている。ファーストルックに登場したブラックのミニドレス。透け感のある生地を用いて春夏らしい軽やかさを演出している一方で、肩のストラップには太いレザーベルトが取り入れられていて、フラットなバイカーブーツとともにタフなイメージも取り込む役割を果たしている。軽やかさと重厚感、この相反する2つを素材によって共存させ、フェミニンさはシルエットで取り込む。このアプローチはその後もレザーのワンピースやシアーなミニドレスとしてあらわれ、ショーの方向性を指し示していく。
カラーパレットはブラック、ホワイト、ブラック、ホワイトの繰り返し。そのなかでもメンズの要素を上げるなら、しなやかなポプリンのシャツだろう。ベースとなったワイドなシルエットのシャツは、クロップド丈へのアレンジや、ウエストインを通して、フェミニンな印象にブラッシュアップされた。
そしてラストは、淡いブルーから深いミッドナイトブルーへ飛ぶ美しいグラデーション。トラディショナルで男らしいストライプシャツは、ランダムに裁断されてスタンドカラーのミニドレスに生まれ変わる。ライダースのスター柄、ドレスの水玉模様をあしらったポップなライダースやドレスは、最後までショーに華やかさを添えていた。