ディオール(Dior)が、2015年春夏コレクションをパリで発表した。ショーの舞台となったのは、ルーヴル宮殿の中で最も古い中庭である、クール・カレ。
2014年秋冬オートクチュールコレクションにおいて、歴史的なものに極めてモダンな何かを見つけるというプロセスに興味を持った、アーティスティック ディレクターのラフ・シモンズ。彼はそこにまだ探求すべきものがあると考え、今回のプレタポルテコレクションでも引き続き、同じアイディアに基づいたクリエイターションを行う。クチュールのフォルムや要素をベースに、現代的なデザインを加えることで、幅広い層にとって魅力的な装いを創り上げた。
過去を振り返る上で、クリスチャン・ディオールのデザインそのものだけでなく、彼に与えた影響を探ったラフ・シモンズは18世紀のフランスに注目した。特に男性や女性の宮廷衣装を思わせるデザインは、コレクションに多く取り入れられ、例えばマリー・アントワネットを彷彿させる丸いシルエットのドレスにタンクトップを合わせたり、男性の上衣であるジュストコールに、スケーター風のキルティングパンツをコーディネートするなど、歴史とモダニティの美しい融合がなされている。
時折みられた小花柄はワーププリントで、当時のようなぼやけた風合いを表現。ドレスはもちろんのこと、ブルゾンやジップアップタイプのジャンプスーツといったアクティブなアイテムにも取り入れられた。また編み上げしたデザインも今季の特徴といえる。光沢のあるリボンを全面にあしらったドレスのほか、エラスティック素材を編んだブーツも登場。伸縮性のある素材が柔らかに脚にフィットする。
ラフ・シモンズは今季のコレクションについて次のようにコメントしている。「私がまず考えたのは、『モダンとは何か』ということ。ディオールで抱いた当初のインスピレーションとは正反対ともいえるフォルムに取り組みたいと思いました。それは、現代の人々が考えるモダンという美意識に立ち向かうことでした。遠い過去にさかのぼるほど、モダニティを感じられます。それは、10年前のルックを『モダン化』したものとは異なります。私が挑戦したのは、非常に歴史的なものにコンテンポラリーなリアリティを吹き込むこと、つまり劇場的な要素にイージーな心地よさを生み出すことでした。それは大切な姿勢です」。