プラダ(PRADA)がミラノファッションウイークで2015年春夏コレクションを発表した。
数ヶ月前のメンズコレクションでプールだったはずの場所に、今回は神秘的なライラック色の砂丘が出現。とても同じ会場だとは思えなかった。そしてファーストルックを飾ったのは、長らくランウェイから姿を消していたスーパーモデル、ジェマ・ワード。ミウッチャに見出されたことでブレイクした彼女の華麗なるカムバックの場は、やはりプラダしかない。そんな嬉しいサプライズがショーへの期待感を高める。
今季の特徴は、素材へのフォーカス。ここ最近続いたコンセプチュアルで、女性の強さを引き立てる表現はトーンダウンし、素材の純粋な美しさへの賛美や職人技への敬意が感じられる。コンストラクションを表面に出したデザインのコートは、大きなステッチが春夏メンズとリンク。途中レザーのトリミングや、ジャカード生地を挟んでヴァリエーションを与えていく。ほどよいフィット感を持った膝丈のドレス、細身のロングコート、ハイネックのブラウス。アイテム型の種類こそ多くはないが、こうした素材での変化でコレクションを豊かに構成しているのがわかる。
花柄のパッチワークは、懐かしさを帯びた60年代、70年代のアンティークを再現したファブリック。砂丘と同じライラック色も見られ、差し色として効いている。美しいブロケード織はシューズのソールにも使われた。プレーンなニット、コットンシャツなどの素朴なアイテムは、ここにきて新鮮ささえ感じさせ、旬な透け感をガーゼで出すというのも、メッシュやPVCに飽きたファッションフリーク達には目新しく感じられるかもしれない。プラットホームのサボに重ね履きしているかのようなレイヤード風のソックスを合わせた足元も目を引くスタイリングだ。
グランマのクローゼットから借りてきたワードローブのようにノスタルジックである一方で、どこか退廃的でもあるという入り混じった雰囲気が後半から強まっていく。それも、糸がほころびる切りっぱなしの裾や真っ赤なソックスに鋭く尖ったポイテッドトゥのハイヒールを合わせた足元のせいだろう。無垢な表面に隠された挑戦的な一面。一筋縄ではいかないミウッチャのクリエイションを見た気がした。