JW アンダーソン(JW Anderson)の、2025年春夏ウィメンズコレクションを紹介。
2025年春夏シーズンのJW アンダーソンが実践したのは、限られた素材のみを使って服の本質に根付いたデザインを追求すること。生地はシルクサテンのみを使い、ニットはカシミヤの毛糸、レザーはカーフレザー、刺繍はスパンコール、装飾はレースのみを使ったストイックなデザインが目を引く。自ら課したルールの中で、どれだけ美しく自由でいられるのか?シンプルでありながらも実験的な、ジョナサン・ウィリアム・アンダーソンの試みがクリエーションに反映されている。
散見されたのは、極端に拡大した要素を1体の服にコンパクトに集約したデザイン。初期のJW アンダーソンを彷彿させるアーガイルのニットは、編地を巨大にマクロ化してミニドレスに仕上げた。襟やフラップにレザーを用いたミリタリーコートは、通常のパターンよりも何周りか大きめに仕立て、ウエストから下の裾を大胆にカットしたかのようなフォルムが印象的。ショート丈にしたことで、アームやベルトのダイナミックな造形が際立っている。
この他、生地の織目や編地を拡大したかのようなドレスや、スカートの裾の重なりを丸ごと全体に落とし込んだようなベアトップのドレスも登場している。
彫刻的なフォルムのピースは、ミニマルなムードをまといつつも独特な存在感を見せている。完全な円形のレザーパーツを吊り下げたスカートはフラットさと躍動感を併せ持ち、規則的に切り込みの入ったニットは、編地にのせられた模様のグラフィカルな効果がより強調されている。
また、胸元のVラインに繊細なレースをあしらったフラッパードレスは、前面は生地を折り重ねてドレープを生む一方、バックスタイルはタイトなミニドレスに仕上げた。前後の佇まいに変化をつけることで、1体のドレスに意外性を付与している。
シルクサテンやカーフレザー、スパンコール刺繍による光沢感と呼応する、プレイフルなグラフィックにも注目だ。サテンのミニドレスには、ボタンやフーディ、ポケット付きニットなどの絵柄をプリントしたトロンプルイユデザインで遊びを効かせた。また、白地のシルクサテンドレスにはデザインについて書かれたエッセイの文面をプリント。服の存在意義、本質を追求する今季のテーマを象徴するピースとなっている。