ダブレット(doublet)は、2023-24年秋冬コレクションを発表した。
「MONSTER」がテーマの今季は、もし狼男や人魚など、「“怪物”と呼ばれるような存在がすぐ近くにいたら…?」という仮定からスタート。自分と異なる存在、馴染みのない存在に対して“怪物”というラベルを貼り遠ざけようとする一方で、テーマパークでは巨大なネズミやクマに手を振ったり近づいていったりすることへの違和感が出発点になっている。自分と違うものに対する無理解や無関心、一方的な怯えを逆手にとり、むしろ皆が皆“怪物であるかもしれない”世界を、多様な想像力をもって描き出した。
人と、異世界の生き物たちがすでに共存している場所の象徴として着目したのが「遊園地」。ふんわりとしたアクリルファーに包まれたウサギやパンダ、クマの着ぐるみコートは、フィクションと現実の狭間から“ダブレットワールド”へと誘ってくれる。着ぐるみの頭はショルダーバッグになっており、肩に掛けて使うことができる。
また、ネズミのとあるキャラクターを彷彿させるドレスは、艶やかなベルベットにパールを散りばめて水玉模様を表現。ポップなレッドやグリーンのパフィージャケットは、丸みを帯びたシルエットでバルーンのように仕上げた。その他にも、子供の頃に憧れたプリンセスのドレスを思わせる華やかなラメニットや、テーマパークのお土産グッズのようなレザーバケットバッグ、クマのぬいぐるみを配したチェーンネックレスなど、夢の世界のキラキラとした遊び心を随所に効かせている。
さらに、フードを被るとワニになれるダウンジャケットや、クマが肩車をしているかのように見えるボトムス、ふさふさとした毛皮を身に着けているかのような感覚で着られるアクリルファーのパンツ、マーメイドの尾ひれを模したスカートなど、生き物そのものを直接装うようなアイテムが散見された。羽を閉じたコウモリが足を包み込むようなシューズや、裾を頭まで捲り上げると丁度クマの顔をかぶっているように見えるニット、内臓をイメージしたカラフルな糸をあふれる程に詰め込んだモンスタートップスなども登場している。
直接的に何かの生き物を表現するのではなく、フォルムやテクスチャーによって多彩な生き物の姿を表したピースも目を引く。ホールガーメントでらせん状に仕立てたニットトップスやパンツは、くるくると波打つようにして身体を覆い、躍動感のある佇まいに。絞り染めのトップスは、特有のとげとげとした形状と、表情豊かな色味を生かし、まるで皮膚をまとっているかのような表情に仕上げた。
また、肩や腕の位置をあえて左右非対称にずらしたシャツやカーディガン、1.5倍に拡大されたデニムジャケットやデニムパンツ、Tシャツなどは、既定のパターンをあえて変更することで、様々な身体の形にフィットし、多様な着方ができるように仕立てられている。1.5倍サイズのウェアは、パターンだけでなく、パーツや生地そのものの繊維まで同じ倍率で拡大されており、極端に大きなボタンやプリントが配されているのが印象的だ。