ジュン アシダ(jun ashida)の2023年春夏コレクションが、2022年10月21日(金)、東京・六本木のグランド ハイアット 東京にて発表された。
2018年に芦田淳がこの世を去ったのち、初のランウェイ形式での発表となった今季のジュン アシダ。芦田淳とも親交のあったピアニスト、清塚信也によるドビュッシー「月の光」の演奏に幕を開けたショーは、ドラマー・齋藤たかしとヴァイオリニスト・吉田翔平を加えたアンサンブルとともに、さながら光の移ろいように展開されてゆく。
シックな鮮やかさを示すトリコロールカラーに、コレクションは始まる。リズミカルにピッチに差をつけたトリコロールのストライプが、カシュクールスタイルのドレスやトップスを、あるいはワイドパンツを彩る。ホワイトでまとめたショート丈のジャケットやカーディガンは、ややショルダーをドロップさせ、ボクシーなシルエットで重心を低く設定するなど、エレガントでありつつも抜け感のあるムードで仕上げられている。
トリコロールのパリ的シックさはやがて影を潜め、いうなればエキゾティックな雰囲気へと移ろう。ロングスカートやワンピースのペイズリー柄、軽快なジャケットやショートパンツ、スカートなどに用いたトロピカルなボタニカル柄、ドレスのシアー素材に広がるさざなみ模様、あるいはミニマルなフォルムのワンピースにのせた水墨画を思わせる諧調豊かなパターン。テイストもさまざまな模様が、時にエレガントに、時にアクティブに、そして時にリラクシングにウェアを彩ってゆく。
ドレスは、首回りを深めのVネックに設定し、溌剌とした雰囲気が主軸。身体を引き立てる優雅なシルエット、繊細な素材感とシンメトリーの均整が織りなすエレガンスを基調としつつも、ワンピースの一方のみのスリーブに連ねたフリルや、斜めに入れたスラッシュ、ウエストに軽快にゆらめくベルトのディテールなど、随所にアシンメトリックな要素を差し込んで変化をもたらしている。
そして素材は、波打つようにしなやかで薄く、きらめきと透明感を湛えている。たとえばきらめきは、同色でまとめたペイズリー柄のミニマルなドレスやローブ、霞に濡れたようなブルーグレーのキャミソールドレス、あるいはラメが流動的な模様を描くレーススカートなどにもっともよく見ることができる。
透明感もまた、きらめきと相まって、光の戯れを彷彿とさせる。とりわけイヴニングドレスにおいては、光沢を帯びたドレスを包み込むようにして、優雅に、緩やかにシアーなヴェールが波打つ。首元やスリーブにはギャザーを寄せ、いっそうのボリュームと装飾性を持たせる。歩みに合わせ、空気を孕んでは大きく膨らみ、一瞬踏みとどまって、深く呼吸するようにして波打つそのヴェールは、繊細にゆらめく月の光を思わせる。「月の光」に始まったショーはこうして、ドレスのヴェールが喚起させる月光のゆらめきと響き合っていたのかもしれない。