ミュベール(MUVEIL)の2022-23年秋冬コレクションが発表された。着想源となったのは、1975年に公開され、今も尚“傑作”と評され続ける映画『グレイ・ガーデンズ(GREY GARDENS)』。J・F・ケネディの妻、ジャクリーヌの叔母とその娘という名家の親子を捉えたドキュメンタリーだ。
アメリカの高級住宅街・イーストハンプトンにありながら、アライグマが住み着いてしまうほど薄汚れた屋敷で隠遁生活を送るふたり。しかし彼女たちは、他人にどう思われようと、自由にファッションを楽しみながら人生を謳歌した。
今季は、そんな彼女たちに思いを馳せながら、オーセンティックなムードの中にミュベールらしいプレイフルなスパイスを加えたコレクションを提案していく。
目を惹くのは、彼女たちの家に住み着いていた“アライグマ”を主役にしたアイテム。ニットには、泡に包まれたチャーミングなアライグマをデザイン。毛足の長い糸を用いてモコモコの毛並みを忠実に表現した、遊び心溢れるテクスチャーが魅了だ。
また、カゴバッグやドッキングスウェットシャツに加え、ネームタグにもアライグマのモチーフが登場。さらに今季は、頭にちょこんと帽子をのせたぬいぐるみもお目見えする。
庭から摘んだ花を部屋に飾ることを習慣としていた彼女たち。そんな心豊かな生活スタイルは、色鮮やかなフラワープリントとして表現し、スカートやドレスにあしらった。また、フーディーやバケットハットに取り入れた優雅なスカーフプリントは、リトル・イディーが好んでいた“スカーフヘアアレンジ”からインスピレーションを得ている。
ふたりのイディーは、自宅にある洋服を自由に組み合わせ、時にはインテリアを衣類としてファッションに取り入れていた。そんなインテリアとウェアの境界をなくした、ユーモア溢れる着こなしを表現したアイテムもラインナップ。中でも、上質なレースカーテンを思わせるトップスとスカートのセットアップは、花やリボンの立体的なモチーフが目を引く繊細な佇まいが印象的だ。
今季は、アウトドアブランド・ワイルドシングス(WILD THINGS)やニューヨークのメトロポリタン美術館とのコラボレーションアイテムも展開。ワイルドシングスとのコラボレーションからは保温性と軽量性を兼ね備えたプレイフルな配色のジャケットが、メトロポリタン美術館とのコラボレーションからはゴッホやドガなどの収蔵作品を落とし込んだTシャツやスウェットなどが登場する。