コシノヒロコ(HIROKO KOSHINO) 2014年春夏コレクションが、ガーデンホールで発表された。今季テーマに据えたのは「光と影の物語」。街は明るく照らされ、夜をも知らぬ輝きを放つ現代。光が強いと、その対極にある影もその存在感を増す。
跳ねるようなリズムのピアノの旋律が鳴り響き、ショーがスタート。会場の奥に投影されていたマンションの窓のようなマス目模様のヴィジュアルの間から、影を纏ったモデルが段々と光を得ながらランウェイを歩く。
始めは、眩い日差しのようにヴィヴィッドなカラーパレットで。ワンピースやドレスには、無機質なコンクリートの建物で構成された街並みが描かれていた。夕暮れに染まったような赤や黄で表現された街、青空が広がる突き抜けるブルーの街など表情は様々。窓柄があしらわれたチューブトップと、同じ柄のレギンスを合わせるとまるでモデル自身が一つの建物のよう。襟元には着物の要素を取り入れて、和の情緒も漂わせる。
その鮮やかな発色は綺麗なグラデーションを描いてトーンダウンし、やがてカラーパレットはホワイトに落ち着く。ドレープとプリーツが自由自在に走る純白のドレスやシャツには、スクエアのパンチングで影をとりこみ、エッジィなアクセントに。またドレープのふくらみも、陰陽を表現する一つの要素となっている。
そこに突如として現れたのは、禁欲的な黒。その黒を切り裂き、裏地に光のような白を忍ばせれば、そのコンストラストによって洋服はテーラードジャケットのような表情を覗かせる。途中、色を取り込むように羽織ったコートの正面を開くモデル達。中には、白と黒がせめぎ合うチューブトップのドレスがレイヤードされていた。
光と影、逞しさと儚さのような相反する要素は、世界のあらゆる事象に潜む。それらは対極でありながら、一方が欠けてはあり得ないという、極めてアイロニックなもの。どちらかが強すぎても弱すぎても駄目。しかし、相反する要素との間に調和が生まれたとき、万物はさらなる輝きを手にれる。コシノヒロコは、明確かつ繊細な対比を落とし込むことによって、その美的表現の確かさを証明して見せた。