コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)の2021年春夏コレクションが、2020年7月28日(火)、東京・南青山にてミニショーで発表された。
川久保玲にとって常に表現の味方であり続ける“メタル”。その魅力を信じ、これまでのコレクションで多用し続けた彼女が、メタルの創造性を新たに模索し、強さを主張したのが今季のコレクションだ。テーマには「メタルアウトロー」を掲げた。
ショーはいくつかのセクションに分けられている。ブラジル出身の写真家、アルベルト・ビタールのコラージュ映像とともに今季のストーリーはスタートし、それぞれに“メタル”の美しさ、強さ、儚さといった多面性を描写する。
最初のセクションでは、まず全身で魅力を堪能する。薄っすらストライプ加工のジャケットとパンツは、サスペンダー付きのワークパンツの中にタックインするスタイル。鏡面反射のようなボックスショルダーのジャケットは、硬質的なのにキルティング加工によって不自然な柔らかさを纏い、ソフトとハードの両立を叶えた。足元には今季もナイキ(NIKE)のスニーカーが合わせられている。
クラシックの中に登場するメタルは、荒々しさと繊細さの共存が描かれている。シルバーシャツはジャケットに隠れ、控えめに存在をあらわす一方、パッチワークされたジャケットは、内から外へと抑えきれなくなった魅力が滲み出すようなニュアンスだ。
そして、この後に現れるグラフィックを交えたセクションは、服を“インダストリアルな鎧”へと変えていく。荒っぽいステッチで繋ぎ合わせた縞鋼板のプリントとフォーマルストライプの組み合わせも、縫い代が露わになった表裏のあべこべも、服の規律を逸脱している。
次にメタルの朗らかな面が登場するのだが、これもまた複雑。シルバーメタリックのレイヤードが、グリーンやイエロー、ブルーのセットアップの全部ではなく一部を飾り、そこに“アウトロー”なニュアンスを垣間見る。メタルの亀裂や剥がれ落ちるようなディテールは、ハッピーな色ですら物ともせず、まるで傷を負ったかのような脆さを感じさせる。
最後に出会う黒のセットアップは、今までとは全く違うエレガントな佇まいで、きっと通常なら奇抜であろうはずのシルバーがクラシックにさえ見える。違和感を覚えたジャケットのタックインは、それが当たり前のようであり、燕尾服のゴージラインまでの切り替えは、ラグジュアリーなアクセサリーみたいだ。今季のコム デ ギャルソン・オム プリュスの世界観なら、花を添えるより美しくも感じる。