ディオール(DIOR)はサマー 2021 メンズ コレクションを発表。今季はランウェイショーを行わず、オンライン上で2部構成の動画を通じて発表した。
今季は、アーティスティック ディレクターのキム・ジョーンズと、ウィーンを拠点とするガーナ生まれのアーティスト、アモアコ・ボアフォがコラボレーション。コレクションの1つ1つのピースには、幼少期をボツワナ、タンザニア、エチオピア、ケニア、ガーナといった様々なアフリカ諸国で暮らしてきたキム・ジョーンズと、自身のルーツやアイデンティティ、黒人であることへのアプローチ、称賛を表現した肖像画を制作するアモアコ・ボアフォによる対話が表現されている。
クリエーションで実践されたのは、アモアコ・ボアフォによる肖像画の連作『ブラック・ディアスポラ』を衣服に置き換えること。スポーツウェアのアクティブさから着想を得つつ、ディオールならではのテーラリングが光る端正なウェアに共鳴するようにして、アモアコ・ボアフォの描き出す世界観が広がっている。
指でなぞるようにして描くアモアコ・ボアフォのフィンガーペインティングならではの、表情豊かなタッチを表現したインターシャニットや、ふわりとやわらかな起毛感のハイネックトップスは、大胆なアートワークが生き生きとした印象をもたらす。また、キム・ジョーンズが自身のアトリエで撮影したキャンバスの写真をもとにした、絵筆のストロークを思わせるジャカードパターンのリブニットも登場する。
さらに、チュールに「ディオール オブリーク」柄を総刺繍したカットソーや、ステッチで肖像のシルエットを表現したステンカラーコート、レザージャケットなど、人の“手”から創造される細やかなディテールも印象的だ。
また、ブルーやコーラル、グリーンといった、シュルレアリスムにも近い鮮明なカラーパレットが印象的。襟にファーを配した淡いイエローのジャケットや、褪せたような色味のピンクベースの総柄シャツ、透明感のあるライトブルーのジャカードブラウスなどが揃う。オールインワンやスティーブン・ジョーンズが手がけたバスクベレーハット、手持ちの小さなバッグなど、所々にヴィヴィッドな蛍光イエローが差し込まれることで、より一層明るさを増している。
アクティブなショートパンツや細身のパンツなどのボトムスには、幅の広いウエストバンドをセット。鮮やかな3色のラインによってウエストをマークし、アイキャッチなアクセントをプラスする。
植物柄も散見されたデザイン。葉をモチーフにしたテキスタイルにアモアコ・ボアフォが愛情を注ぐのと同時に、ディオールもまた、庭園や花々へ情熱を表現し続けており、植物柄は両者の創造性が交差するポイントと言える。光を受けてきらめくツタの葉や花のシャツ、繊細なタッチで描かれたオレンジの花が揺らめくシースルーのシャツなど、植物のみずみずしさや躍動感あふれる表現が見て取れる。