エトセンス(ETHOSENS)は2020-21年秋冬コレクションを発表した。
「感謝の気持ちを込めて贈り物を包む、お祝いのお金を包む、晴れ着に身を包む。日本人は古くから、人を尊重する際の行動や“着る”という行為を“包む”という言葉で表現してきました。」
そう語るようにエトセンスのデザイナー・橋本が今季注目したのは、日本に根付く“包む”という文化だ。服を着るということは、布で身を包むということ。シンプルな理屈でありながら普段意識することのない、新たな目線でクリエイションを展開する。
服で身を包んだ時に発生する、身体と服の間の空間。橋本はそんな当たり前のように存在する空間を再解釈し、デザインの一部とした。エトセンスらしい、ゆとりのあるパターンメイキングを軸に再現する、“肌”と“布”の絶妙な距離感。目に見えない空間をデザインすることで、独特なシルエットの形成を促していく。
例えばコットンシャツは、広めの身幅と大き目のアームホールで、上体の肌と布の距離感を保持するのと同時に、裾と袖口にリブを配することで緩急のあるシルエットを形成。また、テーピングを施したブルゾンのアームはふくらみを持たせて設計し、腕の肌と布の間の空間を生み出しつつ、丸みを帯びたユニークなルックスを演出している。
“包む”という行為から得たアイデアを反映するポイントは、身体と服の関係性のみに留まらない。1つの洋服の中にレイヤー方式でパーツを組み込むことで、まるで“布”が“布”を包んでいるかのような様相を呈するピースも散見される。
ジャケットのラペルや釦を2重にしたり、シャツの中に羽織りのようなパーツを配したりと見せ方は様々。1枚でコーディネートの主役になるデザイン性の高さは、スタイリングの面から見ても魅力的だ。
従来のエトセンス同様にカラーパレットは、自然の世界から抽出した曖昧で形容しがたいニュアンスの色がメイン。アクセントカラーとして、日の丸などに用いられ日本を象徴する色の一つである“赤”を採用している。
無地を基本とするエトセンスのコレクションの中で、毎シーズン数点登場する柄物のアイテムにも注目したい。今季は日本の伝統模様・鳴門渦潮からインスパイアされた波模様が登場。奥行きを表現するため、プリントではなくジャカード織りで細部に至るまで丁寧に描いた。
また、テキスタイルの素材と産地も徹底的に拘った。ジャケットやコート、スラックスに用いたブルーのウール100%組成のジョーゼットは、フォーマル素材の生産を得意としてきた愛知県・津島で織ったもの。シャリ感のある強撚糸を使用することで、ウール100%とは思えないドライなタッチとドレープ感を実現した。
その他にも、静岡県・浜松産の太畝コーデュロイや愛知県・宮地産のウールメルトンなど、日本を産地とした選りすぐりのテキスタイルをコレクション内で多数使用している。