ニルズ(NILøS)は、2020-21年秋冬メンズコレクションを発表した。
今季は、生命の遺伝的設計であるDNAの領域にも介入可能なバイオテクノロジーに着目。バイオアートの思考実験を出発点にデザインを考案することで、テクノロジーを手にした人類に内在する乱用の可能性や、倫理に反しうる振り幅を浮き彫りにする。
象徴的なのは、パックの中身が透けたダウンウェアだ。表地にシースルー素材が採用されているため、通常は覆い隠されている部分が見えるようになっている。分量感のあるダウンジャケットは、下に重心を持たせたユニークなシルエットと所々に配されたドローコードが目を引く1着。極端なフォルムや、随所に施されたドローコードが歪さを際立たせ、透けて見えるダウンパックの、仄かな異質さを思わせる。
また、コーティング加工を施したフード付きジャケットやダイナミックなコートも、無機質でどこか近未来的な雰囲気を漂わせる。高い襟を配し、ショルダーを大きくドロップさせたコートは、ハリのある素材の質感と、ユニークなパターンメイキングによって立体的なフォルムに仕立てられている。
こうした実験的なウェアは、ニルズが織り成すストリートテイストのピースや、都会的なアクティブウェアと調和することで、異質さを抑え、現実感を増していく。バイカラーのジャケットには、ハーフ丈のバルーンパンツとレギンスを合わせ、活動的な着こなしを提示。シースルー素材を採用したダウンのスヌードは、止水ファスナーのポケットを配したカットソー、緩やかなパンツと組み合わせることで抜け感をプラスし、ラフさを見せている。
また、グレーやブラック、白といった無彩色をメインとしたカラーパレットの中で、随所にオレンジや赤といった鮮やかな色彩が差し込まれているのが印象的だ。黒がベースのスポーティーなレイヤードスタイルは、トップスの下に着たオレンジのカットソーを裾から見せ、スニーカーのパーツと色を連動させることでアクセントを効かせた。また、オレンジに彩られた、身体をすっぽり覆うようなオーバーサイズのフーディーや、ダイナミックなバックプリントを施した赤のTシャツなどは、無機的な色彩世界にあえて有機的な要素を取り入れているかのようにも見える。