アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)の2020年春夏ウィメンズコレクションが、2019年9月26日(木)、フランス・パリで発表された。
今シーズン、インビテーションに記されていたのは「Jolene」の文字。1970年代に発表されたドリー・パートンのこの歌は、愛する人の心を他の女性に奪われてしまう悲しみや憎しみを歌った名曲だ。今季のクリエーションはこの楽曲をカバーをしたアメリカ人マルチインストゥルメンタリスト・アーティストLingua Ignotaに大きな影響を受けている。ショーミュージックにも彼女がアレンジした「Jolene」が起用され、ショーにはLingua Ignota本人も来場した。
今季のランウェイを染め上げたのはダークなブラック。ブランドが度々取り組んでいる真っ黒な世界が、ドレスやジャケット、ニットウェア、シューズなど、ありとあらゆるアイテムの上に広がっている。ショーの中盤、まさに紅一点投入されたレッドカラーのシースルードレスを除いては、モノトーンのパレットがメインだ。
漆黒のピースには、肌を露わにする大胆なカッティングを施し、センシュアルなムードを演出。ベアトップドレスは、左足の付け根まで見えてしまうほど、深いカットを入れている。また、セクシャルでエレガントなドレス群は、胸元でストラップやテキスタイルが絡み合うようにレイヤードされ、複雑な表情を見せている点も印象に残った。
レーシーなキャミソールや、メッシュ素材のワンピース、シースルーのドレスといった透け感のあるアイテムも散見。艶やかなサテンのジャケットや、エナメルのスキニーパンツも、妖艶なムードを演出するのに一役買っている。
崩れ落ちるようなスタイリングも印象的。ロングアウターの袖には片腕だけを通して、ドレスのストラップは左肩だけをずり落とすようにして、アシンメトリーな着こなしを生み出している。
足元を彩るシューズは、1995年にアン ドゥムルメステールのショーに登場したカーヴィーなヒールパンプスを復刻。25年の時を経て、鳥の爪のように力強い形状のシューズを、セバスチャン・ムーニエがインダストリアルなムードにモダナイズした。