パーミニット(PERMINUTE)の2019年秋冬コレクションが、2019年3月20日(水)に渋谷ヒカリエで発表された。
デザイナー半澤慶樹が10歳の頃に出会った、絶滅した生物をCGで描いた作品からインピレーションを得た今季。その中で、今は実在しない生物は、今では確認しようのないものではあるが、事実が分かり得ないものだからこそ持っている良さがあるのではないかという疑問を抱き、リアルとイマジネーションの狭間にある、極めて現実的な空想世界に思いめぐらせた。
レトロなチェックと花柄のレイヤード。スリーラインの入ったジャージーワンピース。クロシェニットのトップスやスカート。ベースは極めて現実的なもので、ベーシック、あるいはフォークロアなワードローブを基本に置いている。そこで見えてくる服の本質の追及は、ライナーが飛び出したポケットや、コルセット風のドレスのウエスト、シーム部分があらわになった裏返しにしたようなディテールに感じられる。
過去を振り返る一方、デジタル化された非現実的なデザインも存在している。例えば、コートには、ファーの代替品として、電磁波を流すパットを全面に配した。
そして、今季もっとも大きな疑問符を投げかけたのは「土着のものにこそ生命感が宿るのではないか」ということ。思考のなかで尽きぬ、架空の土地で使用されている言語はどんなものだろう。文字という存在はどこから生まれたのだろう、という問いかけだった。
服の製作にあたっては、デザインではなくフォントから考え始めたという。そして、文字の存在を突き詰めたときに見えたのは神通力の話で、元を辿れば人間ものですらないではないのではないか?と新たな疑問を浮かべた。
遠い過去を見る一方、現代では、AIによる自動筆記などデジタル化が進み、手で文字を書くという所作すら減ってきている。アナログを経て、今また再び人間の手から離れようとしているのだ。
追想で出会ったアナログの記憶は、服に顕著にあらわれた。シアーなホワイトワンピースには、人間の文字と密接にかかわってきた鉛筆を装飾としてあしらっている。しかし、インナーとして中に透けているトップスには、対照的なニュアンスを意図するデジタルフォント。1着のなかで現実とイマジネーションが共存している。