アンダーカバー(UNDERCOVER)は、2019-20年秋冬メンズコレクションを、2019年1月16日(水)にフランス・パリのSalle Wagramで発表した。
クラシカルな劇場内に一筋のレーザーライトが灯ったかと思うと、光が広がって空のグラフィックが映し出された。コレクションのテーマは「THE DROOG」。スタンリー・キューブリックの映画『時計じかけのオレンジ』に登場する造語の若者言葉で、“仲間”を意味する。ランウェイに現れたのは、劇中の世界を彷彿させるルックの数々。狂気と風刺に満ちた世界観がコレクションに投影された。
最初に現れたのは、ショッキングピンク、ブルー、黄緑といったブライトな色彩のマントやガウンを羽織った3人のモデル。羽根つきのハットに仮面、杖を身に着け、ファンタジックな雰囲気を演出する。
冒頭のルックと同様に、イエローのステンカラーコートや、ライトブルーのウールコート、パープルのオールインワンなど、登場する色彩はテーマに相反して明るめ。それでも尚、カラーブロックのニットに“Horror show”の文字が施されるなど、どこか退廃的なムードがコレクション全体に流れている。
多用されたのは、『時計じかけのオレンジ』に関連するグラフィック。主人公が好んだベートーベンの肖像や劇中のシーンが、そのままコーチジャケットや、フーディ、中綿コートにプリントされている。中でも、非行や暴力から更生させる象徴的なシーンをあしらったコーチジャケットは、服地のシワ感とプリントのリアルさが相まって迫力のある1着に仕上がっている。
時間差で同日に行われたヴァレンティノ(VALENTINO)のショーにおいて発表された、アンダーカバーとヴァレンティノのコラボレーション。アンダーカバーのショーにおいても、タッグを組んだアイテムが登場した。両ブランドの頭文字からとった“VU”の文字とUFOモチーフを総柄にしたセーターやパジャマシャツは、デフォルメされたポップさが魅力だ。
“V”の文字と人の肖像、UFOを組み合わせたグラフィックは、パーカーやフード付きコート、ステンカラーコートのフロントにダイナミックにプリント。シュールなイメージが、見る者に余韻を残す。その他、両者のシンボルやロゴを組み合わせた総柄や、UFOのイラストをあしらったダウンジャケットなども展開された。
ショーのフィナーレでは、バックにバラの花をあしらったマントを羽織り、全身レッドに身を包んだモデルが次々に登場。使われたBGMは、「雨に唄えば」。『時計じかけのオレンジ』劇中で主人公を演じたマルコム・マクダウェルが歌うバージョンの後、映画『雨に唄えば』でジーン・ケリーが歌ったバージョンが流れ、ダークでバイオレンスなムードと明るくハッピーな雰囲気の対比を描いた。