ツモリチサト(TSUMORI CHISATO)の2017-18年秋冬コレクションでは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館に足を踏み入れた津森が、そこで見た景色を洋服へと変えた。カラフルで愉快な今シーズンの洋服には、その思い出が詰まっている。
津森はまず、アーティストが使用する道具をプレイフルな洋服に転換。筆先を想わせるファーは、色鮮やかにあしらわれた。丸いパレットはぐるりと体を巻くラップスカートのように。ボリュームのあるジャカードコートは、チューブの絵具が羅列された表地をあえて裏返し、独特のボリューム感を如何なく発揮している。ニット帽に至っては、チューブの先を切り取ったような形をしていて、上の穴から髪を出せば、絵具が飛び出ているようにも見える仕組みだ。
ここでのメイン作品は、何と言ってもツモリチサトが得意とする手描きプリント。そこには、見るものを惹きつける陽気なサプライズが隠されている。宇宙シリーズは印象的なプリントのひとつだ。宇宙に浮かぶ惑星の中には、よく見るとネコ型の星がほかの星と一緒にぷかぷかと浮かんでいる。また、無造作にぐるぐると描かれたマルたちは、チュールに重ねられて踊るように立体的。コレクションの中でマルの表現は進化し、かぎ針によって飛び出した。ワンピースやショールとなって“カラフル”を届けてくれる。
現代アートのような刺繍は、それひとつで物語を紡ぎ出す。自由闊達な筆の動きを彷彿させる絵画はそのままドレスに落とし込まれた。ラメやスパンコールなどが相まって、絵画は今にも動き出しそうなほど躍動的になり、魅力が一層引き立てられる。
そして、もう一つ忘れてはならないモチーフがある。美術館を案内してくれた音声ガイドのリモコン。画家が絵画を手掛ける風景から、美術館の景色、そして絵画そのものを見る光景……。ビルバオ・グッゲンハイム美術館を舞台にしたツモリチサトのファンタジーに迷い込んだ私たちを、スカートやニットトップスの上で楽しく案内してくれる存在だ。