映画『キャロル』が、2016年2月11日(祝・木)より全国ロードショー。
原作は『太陽がいっぱい』、『見知らぬ乗客』で知られる作家パトリシア・ハイスミスのベストセラー作品『キャロル』。1952年のニューヨークを舞台に、2人の女性の愛の物語を描く。クリスマスで賑わう百貨店でアルバイトをするテレーズは、娘へのプレゼントを探しにきたキャロルに出会う。忘れ物の手袋を届けたことをきっかけに、徐々に関係を深め、2人は恋に落ちていく…。
主人公のキャロルを演じるのは、『ブルー・ジャスミン』でついにアカデミー主演女優賞を射止めたケイト・ブランシェット。彼女に惹かれるテレーズ役は『ドラゴン・タトゥーの女』で、アカデミー主演女優賞にノミネートされたルーニー・マーラが務める。監督は、『エデンより彼方へ』のトッド・ヘインズ。女性同士の恋と逃避行の旅を切なく描いていく。
初めて脚本を読んだのは7年前かしら。私もかなり早い段階から関わっていたのですが、実はこの企画、プロデューサーの手に10年間もあたためられていたものなんです。というのも、製作費がうまく集まらず作れないかも…という状況だったんです。
今聞くと驚く話でしょうが、美しい脚本であるのに、女性同士の恋を描く作品だということで、資金集めがとても困難でした。連絡が来て脚本が届いたときには、やっと映画化できるなと思いましたね。
当時に比べると現在は、多くの国で同性を愛する気持ちを示す言葉が存在していますし、ジェンダーもさまざまな形があります。それが許されていない国だとしても、同性への恋を表す言葉がありますよね。1950年代は、表現する言葉が存在しなかった。より孤独を感じていたのではないでしょうか。
女性に恋することとこれまで(異性に恋すること)との違いをよく尋ねられますが、差は感じませんでした。どちらかと言えば『ロミオとジュリエット』に思いをはせていましたよ。彼と彼女の愛もまた、あの時代の観念では許されない恋だったのですから。
実は、役柄との共通点はいつも考えないんです。(共通点が)あるとしても、それは自然に存在するので、役者としてそれを掘り下げることが役立つとは思えないので。
キャロルに対して“あっ”と思ったところは、神秘的なところです。わからない部分を秘めているところ。そこがテレーズ、そしておそらく観客も惹かれるポイントだと思います。人から距離を置くのではなく、神秘さを出すことに力を注ぎました。
キャロルとテレーズが2人でお茶を飲むシーンです。実は、映画『逢びき』へのオマージュが入っています。ある意味自分にとっては、この役をどう演じるか、他のシーンをどう演じるかがここで決まるように感じていました。何も起きていないように見えるのですが、その瞬間に全てが起きている…。なので、いかに抑制をきかせるかが大切。(カメラ位置の関係で)ルーニーとお互いに目線をあわせることができなかったので、技術的にも難しかったです。