ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)の2015-16年秋冬コレクションのキーワードは、1.ブラックというヨウジを象徴する色、2.切りっぱなしのディテール、3.バイカラーの色の切り替え――の3つに集約される。
ショーの前半は「黒の衝撃」ならぬ「黒の再来」である。最初に現れたのは、全身黒づくめの男。ジャケットはピーコートに近い8ボタンのダブルブレストで、袖口や襟の部分が二重になっていて、さらにヘムの処理が切りっぱなしになっている。パンツはわたり幅が40cm以上ありそうな太めのシルエットで、それをクロップド丈で穿いている。靴はラバーソールのモンクストラップのサンダルだ。
その後も黒の行進が続く。シャツで白を取り入れているルックもあるが、ここまで黒づくめのヨウジは久しぶりに見た気がする。新しさという点では少し物足りない部分もあるが、ファンにはたまらないヨウジならではの世界観がそこにはある。安心して見られる伝統芸能といえばいいだろうか……。
中盤に入ると、ようやくブラック&ホワイト以外の色が登場する。ボックスシルエットの3つボタンジャケットは、フロントの半身がそれぞれブラックのウール、グレーのヘリンボーンに切り替えられている。ニットのセットアップは、左上半身、右上半身、左下半身、右下半身の4つに色と編み地を変えていて、アシンメトリーなデザインになっている。終盤には、マーブル調の色彩のベルベットのセットアップを披露。ラストは生成りのスーツで締めくくった。
シルバーのインビテーションには「HAVE a nice YOHJI」の文字が。ここ数年、日本では急速にヨウジに熱狂する若い世代が増えているが、「良い1日を!」と同じように「ヨウジを気軽に楽しんで!」みたいなことを言いたかったのだろうか……。
text by Kaijiro Masuda(Fashion Journalist)