イッセイミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)の2015-16年秋冬コレクションは、19世紀に活躍した建築家、チャールズ・レニー・マッキントッシュの建築や家具にインスパイアされたコレクションだ。
コレクションは3部構成になっていて、最初のパートは珍しくスーツからスタートする。ファーストルックのスーツの素材は、ウインドペンとストライプを織で表現したウールシルクポリエステル。シルクは群馬で養蚕したものだそうで、こんなとこからも純国産にこだわるブランドの姿勢が感じられる。パープル、ネイビー、ブラックの3色があるが、とくにパープルの優美な光沢は、昨年世界遺産に登録された富岡製糸場からの繋がりを感じずにはいられない……と言ったら言い過ぎだろうか。
マッキントッシュの建築の影響を色濃く感じさせるビッグシルエットのコートは、建物の構造やディテールを織で表現したスペシャルな逸品。スーツの後に登場するニッカボッカやハーレムパンツなどのアイテムと合わせて、アフリカの黒人のお洒落集団「サプール」的な匂いを感じさせる。
お次はビジネスマンの週末の装いに焦点を当てたグループ。マッキントッシュのポートレートをインスピレーションソースに、忙しいウィークデイから自らを解放できるような、リラックス感のあるニットとジャージーを様々なアイテムで提案している。代表的なのは、ミラノリブのニットスーツとチェックのウールモヘアのセーター。ボーダー柄のツイードジャケットなど、マッキントッシュの出身地であるスコットランドを連想させる素材もある。
最後のパートは、デザイナー高橋悠介の持ち味とは少し異なる印象の艶やかな夜会服を並べた。バラのモチーフのデジタルプリントのシャツや、オパール加工で円形状に穴を開けたベルベットのアイテムは、色気がプンプン。写真家の藤原聡志の写真をプリントしたTシャツやシャツも花を添えている。
カラーパレットはブラック、ネイビー、ブルー、パープル、レッドなど。以前のストリート感はやや薄れたが、華やかさという新境地を見せた高橋。イッセイの代名詞であるプリーツをショーで封印したことも、できそうでなかなかできることではなく、デザイナーとしての強い意志を感じた。
text by Kaijiro Masuda(Fashion Journalist)