アクリス(Akris)の2024-25年秋冬コレクションが、2024年4月16日(火)、東京・六本木の国立新美術館にて発表された。ランウェイには、モデルの稲垣貴子、福士リナが登場した。
アクリスは、1922年にスイスのザンクト・ガレンで誕生したラグジュアリーブランド。“目的を持ち自立した女性”のためのブランドとして、生地や素材、細部にこだわるクリーンで構築的なスタイルを提案している。
今季のインスピレーションは、スイスの写真家、カタリン・ディアーのフォトグラム作品から。フォトグラムとは、カメラもネガも使用せず作られるアナログ画像のことだ。印画紙の上に物体を置き、光を当てることで、物体はその外形を超えて捉えられていく。
軽いオーガンジー素材のドレスやロングスカートには、カタリン・ディアーのフォトグラム作品をデジタルフォトプリントであしらっている。歩みを進めるたびに、たっぷりの布地がやわらかに風を抱えて、木漏れ日のように淡いグラデーションを揺らめかせる。いきいきいとしたグリーンや、夕焼けを思わせるオレンジ、色香を漂わせるピンクといったカラーリングも、フォトグラム作品の色彩をそのまま落とし込んだものだ。
コレクション全体を通して、雰囲気は控えめかつエレガント。流麗なシルエットのコートやブレザー、ベーシックなニット、贅沢に布地を使用したワイドパンツなど、洗練を際立たせる優美なワードローブが揃う。一見シンプルなそれらも、組み合わせによって個性を演出しているのが特徴で、たとえばロング丈のチェスターコートの上に、ショート丈のレザーブルゾンを重ねたルックは、長短のコントラストがスタイリングに遊びをプラスしている。
着こなしは全体としてトーン・オン・トーンでまとめつつ、異なる素材感のレイヤードにより奥行きをもたらしているのがポイント。ロングコート、ジャケット、ニット、パンツと、異なる素材が生みだす繊細な階調が、心地よくまとまりを見せている。雲のように柔らかいフェルトのようなニットや極上の手触りのブークレ加工されたカシミヤといった温かみのある素材には、ラッカー仕上げのレザーやスパンコールの光沢で煌びやかさを演出。足元にはメタリックなピンヒールを差し込んで、全体をエッジーに引き締めている。
カラーパレットは、ブラック、モカ、ケールグリーン、ディープパープル。時折、明るく官能的で温かい、アンバー、マゼンタ、ペリドット、ピュアエクリュのトーンが現れ、メランコリックな世界に光を放つ。