ウィザード(wizzard)の2024-25年秋冬コレクションが、2024年3月14日(木)にオンライン形式で発表された。
魔術師という意味を持つウィザードが2024-25年秋冬コレクションのテーマに選んだのが、「クラフト(KRAFT)」。技能や技巧といった意味を持つその言葉は、超自然的な魔術とは対局にあるようにも捉えられるが、その一方で、ほんの少しの差異で成果物に大きな差が生じるということに思いを馳せれば、両者の繊細な空気感は呼応するところがあるのかもしれない。
技巧的な魔術師といったところか、ブランドが得意とするレイヤードスタイルが目を惹いた。ファーストルックはオールブラックスタイルで、重厚なレザーとボアを組み合わせたビッグシルエットのアウターを羽織っている。
モデルが上着を何気なく脱いで椅子にかけると、その下に着ていたものの軽やかさに気が付く。ボリュームを持たせたアームがまるで空気を含んだように見えるシャツや、動くたびに裾が揺れるアシンメトリーなスカート。同じブラックという色味を共有しながらも、まったく印象の異なるアイテムが一体の中に同居する様は、さながら魔術のようである。そして同時に、計算しつくされたそれは技巧といって良いのだろう。
複数のトップスを繋げたようなパッチワーク風のセーターからは、異なる性質がひとところに集まろうとするカオスが醸し出される。右半身は秋冬らしいイエローブラウンのハイネックセーターかと思えば、左半身は網目がボーダーを織りなすグレーのニット。異素材たちがざっくりとした太目の糸で繋ぎとめられ、さらに、どこかから拝借してきたかのようにフリンジやニットフリルが配されている。この混沌とした状態に心地よさを感じるように、モデルは音楽を聴きながら横たわっている。
気取らないリラクシングなシェイプも、今季特筆すべきポイント。“KRAFT”の文字を配したTシャツや、糸でサイドラインを施したトラックジャケットのセットアップなどは、実際の体よりも大きくみせるはずのビッグシルエットを、肩に落ち感を持たせることでその存在感を和らげ、やわらかなムードに昇華している。
また、スポーティーな印象のアウター類には、襞襟のように装飾的なディテールやバルーンスリーブを加えたり、裏地にやわらかなファーを採用したりすることで、品や余裕を感じる穏やかな表情にまとめあげた。