トム ブラウン ニューヨーク(THOM BROWNE.NEW YORK)は2014年6月29日(日)、2015年春夏コレクションをフランス・パリで発表した。
会場に入ると、椅子に座った20人のモデルが目隠しをされて座っている。感情がなく微動だにしないその様は、人形のようにも捕虜のようにも見える。遠目ではグレンチェックに見える生地は、凝視すると1本ごとの線が波長になっていて、何かコンピューターの初期の時代を連想させる懐かしさがある。
会場の照明が落とされると、最初のイリュージョンが訪れる。モデルが着ている服が暗闇で何か別の物体に生まれ変わったように発光しはじめるのだ。これは恐らくテキスタイルに発光する糸を用いているのだろう。
その後に現れたのは、20人の捕虜(?)を見張る2人の監視員。片手にスターウォーズの光剣「ライトセーバー」を持った様は、軍人(ダーク・ジェダイ)を連想させるもので、モデルの目隠しを高慢な態度で1人ずつ取っていく。そんな2つの演出の後に、ショーは幕を開けた。
ファーストルックは、ピンクとグレーのシアサッカーのジャケットとショートパンツのセットアップスーツ。シアサッカーには蝶のモチーフが上からプリントされていて、アメフトの防具のようなパットで補強されている。繊細な生地とパットの対比が面白いが、スターウォーズの「ストーム トゥルーパー」をイメージしたように見えなくもない。今回のコレクションがスターウォーズをテーマにしていることは明白だ。
コレクションを支配するのは、そのストーム トゥルーパー的な防具を入れたような丸いシルエットと、ダース・ベイダーをイメージしたと思われる肩が極端に張った逆三角形のシルエット。ダース・ベイダーのルックは、折り紙細工のように胸や股間、お尻の部分をピラミッド型に立体的に膨らませていて、衣装的な雰囲気。パンツの裾はダブルカフになっていて、前後差が5cmくらいありそうな逆モーニングカットになっている。着る着られないは別として、技術的に難易度が高いと思われる技術に果敢に挑戦している。
テキスタイルは、シアサッカー、ウールのガンクラブチェック、厚手のオックスフォード、線を起毛させたウインドペン、ファンシーツィード、大柄のタータンチェックなど。色はグレー、カーキ、ホワイト、ピンク、ブラック、レッド、ネイビーを主体に、イエロー、オレンジ、ライトブルーを挿し色として使っている。
今回のコレクションは、単純にスターウォーズのファンであることから生まれたものなのかもしれないが、何となく戦争や紛争に対する警笛を鳴らしているようにも思えた。シスの暗黒卿であるダース・ベイダーのルックにプリントされた蝶のモチーフが、平和を願う使者のように見えた……。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)