2014年4月にニューヨークのトライベッカ映画祭で、ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)が初めて手掛けたディオール(Dior)のオートクチュールコレクションの舞台裏に迫るドキュメンタリー『ディオールと私 (原題:Dior and I )』が上映された。2015年3月14日(土)より全国で順次上映される。
フレデリック・チェン(Frederic Tcheng)監督による『ディオールと私』は、トライベッカ映画祭で、コンペティションのオープニングナイトドキュメンタリーとして公開。ラフ・シモンズがディオール就任後、初となるオートクチュールコレクションの舞台裏を描いたドキュメンタリーは、数々の伝説に彩られたメゾン、クリスチャン・ディオールの世界へと観客を誘う。そこには、オートクチュールを支える多くの人々が、苦労を厭わず献身的に仕事に取り組む姿がある。
プレッシャーにさらされるファッション界の日常と、ブランドの象徴的な過去との不思議な共鳴を織り交ぜながら展開される映画は、ラフ・シモンズのビジョンを形にする職人たちへ、色鮮やかにオマージュを捧げる作品にもなっている。
『ディオールと私』では、通常は公開されていないところまで踏み込み、ラフ・シモンズがデビューコレクションを完成させるまでのストレスフルな8週間を記録。アーティスティック・ディレクターであるラフのクリエイティブなプロセスから、疲れを見せず精力的に作業するアトリエの職人たちまで、デザインハウス内部で行われる作業を映し出しながら、オートクチュールに携わる人々、彼らの仕事、そしてクリスチャン ディオールの伝説を結ぶ絆を深く掘り下げている。
公開された貴重な場面写真では、悩ましい表情でドレスを見つめるラフ・シモンズ、偉大な伝統を支えて続けているお針子たちの様子、一枚のドレスが出来上がるまでの裏舞台の様子が分かる。苦労の末にアトリエから誕生したドレスをモデルたちが身に纏い、エレガンスなコレクションを披露しており、そのどれもが一流であり、人々を魅了する。
左) 当初は白だったが、シモンズの意向により変更された黒ジャケット
右) スターリング・ルビーの作品にインスパイアされたドレス
ディオール 2012-13年秋冬オートクチュールコレクション より
劇中で制作の様子が明かされる、2012年秋冬オートクチュールコレクションは全54体。ラフ・シモンズがスタッフに無理だと言われながらも実現したドレスの数々は、どれもクチュリエとシモンズらの計り知れない試行錯誤のもとに生み出されたものだ。
たとえばオープニングを飾ったジャケットスタイルも、当初は白だったが、シモンズの意向により新しく作成された黒いジャケットを採用。また現代アーティスト、スターリング・ルビーの作品を再現しようと試みたドレスの数々は、色が多すぎて再現が難しい上に時間がないと断られてしまうものの、シモンズが「本番直前のギリギリまであきらめない」と語り、土壇場ですばらしいプリントを完成させたもの。
左) 徹夜で完成させたロングドレス 右) 初めてショーを経験した、モデル・エステル
そして本番直前にシモンズの修正をうけ、スタッフがほぼ徹夜で完成させた至高のドレスも。美しいピンク色のロングドレスは、なんとコレクション当日の朝に完成したそうだ。ディオールはおろかショーの経験が初めてだったモデル・エステルは、本番前にシモンズに「歩き方がイマイチだ」と指摘されてしまい、舞台裏で緊張の表情を見せるが、最後は白い華麗なドレスで見事にウォーキングを披露した。
また日本での映画公開日決定とともに、未公開だった映画の場面画像も続々公開。その中には、生誕110周年を迎えるクリスチャン・ディオールがデッサンする姿も。その他、米ヴォーグ編集長のアナ・ウィンターとラフがコレクション会場でキスする様子など、ディオールのコレクションが世界で注目されていることを表す貴重な写真が解禁された。
ニューヨークを拠点に活動するフレデリック・チェンは、この『ディオールと私』で、単独での監督デビューを果たした。チェンは2009年にヒットしたドキュメンタリー映画「VALENTINO:THE LAST EMPEROR」で共同プロデュース・編集・撮影を手掛け、「DIANA VREELAND: THE EYE HAS TO TRAVEL(ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ)」では共同監督を務めている。
【作品情報】
『ディオールと私』
公開日:2015年3月 Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー
配給:アルシネテラン/オープンセサミ
提供:アルシネテラン/オープンセサミ/Bunkamura
Courtesy of CIM Productions