クレージュ(courrèges)の2023年春夏コレクションが発表された。
ショーの始まりを知らせる音楽と共に、砂が天井からビーチに降り注ぎランウェイに流れ込む。その姿はさながら砂時計のよう―今季のクレージュは、何千年という時をかけて海辺に流れてきた時間に着目。海辺で生じる事象や、珊瑚などのモチーフを過去、そして未来に向ける視線と絡め、コレクションに落とし込んだ。
ウエットスーツのように全身を覆うレザージャケットは、過去のアーカイブを引用しアレンジ。分厚く重厚感のある見た目は、ウェットスーツらしさを残しつつも、袖口に深く切り込みを入れたりフロントに大きくポケットを配したりと、機能性にも優れたジャケットへと進化した。胸元からお腹、脇から足元にかけてボタンを連ねたフロードレスも同様に、過去にローンチしたドレスをアップデート。地面に引きずるほど長い裾がビーチサイドでの優雅な時間を演出する。
度々登場するウォッシュドデニムで統一された、ボタンとずれた位置にジッパーを配置したジャケットや股下部分にカットアウトを施したパンツ、裾が一部垂れたようなデザインのショートスカートは、波に洗われた様子を表現。他方、ホワイトカラーのワンピースは、至る所に糸のほつれやダメージを施した。これらのルックは、海辺に放置された物は時間と共にその姿を変える様を伝えている。
砂をイメージしたかのようなホワイトベージュや、ブラックなどシックなカラーリングが多い中、ひと際目を惹くのが、鮮やかなオレンジカラーで彩られたタイトなワンピースだ。海辺の朝を連想させるランウェイも相まって、朝焼けを思わせるグラデーションに仕上げている。
太古より海の生き物が住処としてきた珊瑚は、ドレスやトップスに姿を変えた。水中でゆらゆらと揺れ、その中に生き物を隠している様子を彷彿とさせるようなデザインに目を奪われる。トップスは首元まで詰まったボタンと真横に配したジッパーが印象的。また、貝殻の内側に付いている真珠層から着想を得たメタリックなピアスやイヤーカフもコレクションに華を添えている。