「杉本博司 本歌取り─日本文化の伝承と飛翔」が、兵庫の姫路市立美術館にて、2022年9月17日(土)から11月6日(日)まで開催される。
歴史と存在の一過性をテーマに多岐にわたる表現分野で活動を続けてきた杉本博司は、かつて、自身の作家活動の原点ともいえる写真技法を、有名な古歌を取り入れて作歌する和歌の技法「本歌取り」と比較して「本歌取り論」を展開した。
この「本歌取り論」において杉本は、日本文化の伝統は旧世代の時代精神を「本歌取り」すること、すなわち古い時代の感性や精神を継承しつつ、そこに新たな感性を加えることで育まれてきたものであろうと指摘している。そして、自身の創作においても、日本にとどまらず世界中の文化を踏まえて「本歌取り」を試みたいと記した。
「杉本博司 本歌取り─日本文化の伝承と飛翔」は、写真技法にとどまらない「本歌取り論」の展開を試みるもの。時間の性質や人間の知覚、意識の起源など、杉本が長年追及してきたテーマを取り込みつつ、千利休の「見立て」──本来茶の湯の道具ではなかったものを茶の湯の道具として用いるもの──やマルセル・デュシャンの「レディメイド」──大量生産された既製品を作品として用いるもの──の参照のもと、新たな「本歌取り」の世界を組み立てる。
本展では、杉本の作品と、その「本歌」となった作品をあわせて展示。初公開となる屏風仕立ての写真作品《天橋立図屏風》とその着想源となった伝 能阿弥筆《三保松原図》(重要文化財)、春日大社に関わりのある《金銅春日神鹿御正体》(重要文化財)とこれを本歌とした《春日神鹿像》などを同時に公開し、杉本の「本歌取り」の考え方を明確に伝える展示を展開する。
また、会場では、尾形光琳《紅白梅図屏風》を本歌とする《月下紅白梅図》や、杉本の代名詞ともいえる大判の写真作品などの代表作に加えて、姫路城を撮影して屏風に仕立てた《姫路城図》、書寫山圓教寺所蔵の《性空上人坐像》を本歌とする写真作品《性空上人像》など、姫路の文化財に着想した新作も公開。「本歌取り論」提唱以前から現在に至るまで、杉本作品に通底する「本歌取り」の発想に光をあてる。
「杉本博司 本歌取り─日本文化の伝承と飛翔」
会期:2022年9月17日(土)〜11月6日(日) 会期中に展示替えあり
[前期 9月17日(土)〜10月10日(月・祝) / 後期 10月12日(水)〜11月6日(日)]
会場:姫路市立美術館 企画展示室
住所:兵庫県姫路市本町68-25
開館時間:10:00〜17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日(9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開館)、9月20日(火)、10月11日(火)
観覧料:一般 1,200円(1,000円)、大学・高校生 600円(400円)、中学・小学生 200円(100円)
※( )内は20人以上の団体料金
【問い合わせ先】
姫路市立美術館
TEL:079-222-2288