フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)は、2022-23年秋冬コレクションを、恵比寿ガーデンプレイスの中央広場にて発表した。
今季のテーマは「Area 23」。“23”は、デザイナーの田中文江にとって大切な数字。“2”には人に対する感謝の気持ちを、“3”には一歩踏み出す勇気を乗せ、「今、この瞬間にショーができることの幸せ」な気持ちを、空間一帯を使って表現した。
また、「23」という数字は、時計で見ると絶対に針の交わらない“11時”を指しているが、“12時”になると針が交わって鐘が鳴る。一歩一歩、少しずつ歩みを進めることで、いつか鐘を鳴らすことができる、という希望や祈りもまた、コレクションに込められている。
中央広場へと繋がる長い坂道のランウェイは、まさに希望へ向かって進んでいく道のりを象徴しているかのようだった。フミエ タナカならではの装飾性や、テキスタイルの多彩さを生かしつつ、凛とした強さを描き出していたのが印象的だ。
例えば、しなやかなオーガンザのドレスにはレザーのコートを合わせ、ふわりと柔らかなシフォンドレスや花柄ワンピースにはハーネスをプラス。ジャケットの背面にはキルティングの切り替えを施し、複数のポケットを配したアクティブなシャツとカーゴパンツのセットアップには、モダンな幾何学模様のカモフラージュ柄を落とし込んだ。これらの“身体を守る”エッセンスは、華やかさを保ったまま、何者からも妨げられることなく歩みを止めない、という意志を象徴しているかのようだ。
加えて、エキゾチックなテキスタイルを用いたドレスや、裾にファーをあしらったパンツなど、民族衣装を彷彿させるデザインも散見された。更紗のような幾何学模様や花柄のテキスタイルがオリエンタルな雰囲気を漂わせる一方で、花や葉など植物を象ったレザーやメタルのクラフトワーク、レースを重ねた大きな襟などのディテールは西洋的なアプローチを思わせる。多様な表現を共存させ、個々を際立たせながら調和させているのが見て取れる。
シースルーのフラワージャカードのブラウスには、同じ柄のストールを頭に巻き付け、大容量のバックパックを合わせてノマドを思わせる佇まいに。レリーフのようなチョーカーやベルトパーツなど、シンボリックなデザインのアクセサリーも存在感を放っていた。
終盤最も目を引いたのは、髪の毛を編み込んだルックの数々だ。艶やかなブロンドをしっかりと編み込んで仕立てたベストやケープ、髪の毛をフリンジに見立てた流れるようなシルエットのスカートなどが登場。ラストルックを飾るドレスは全て髪の毛で仕立てられており、高密度に編み込まれた部分はジャカードのように緻密な模様を描き、動きを持たせ、揺らめくように仕上げたバックスタイルは柔らかくも気高いオーラを漂わせていた。
©JFWO / FUMIE=TANAKA