恋愛映画『ちょっと思い出しただけ』が、2022年2月11日(金・祝)に公開される。池松壮亮と伊藤沙莉がW主演。
映画『ちょっと思い出しただけ』は、『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画をつくったら〜』や『くれなずめ』などを手掛けた松居大悟監督が世に送り出す“自身初”の完全オリジナルラブストーリー。恋人と過ごす夜に感じる「世界に今、私たちだけ」という感覚や、誰しも孤独と不安を感じたことのある夜に少しだけ無敵になれる“一瞬の永遠”を描く。
物語のインスピレーション源になったのは、クリープハイプの新曲「ナイトオンザプラネット」。尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げるジム・ジャームッシュの名作映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書き上げたこの新曲を受けて、松居監督が“ちょっぴりビターな”ラブストーリーを書き上げた。
主人公となるのは、怪我でダンサーの道を諦めた佐伯照生(てるお)とタクシードライバーの野原葉(よう)。2人を中心に、関わる登場人物たちとの会話を通じて、都会の夜に無数に輝く人生の機微を、繊細かつユーモラスに映し出す。
物語では、照⽣の誕⽣⽇である「7月26日」を軸に、2021年から1年ずつ同じ日を遡り、別れてしまった男と⼥の“終わりから始まり”の6年間を描いている。年に一度訪れる“ある1日”を、現代を反映させつつ、松居監督独自の世界観で描き出した。
W主演を務めるのは、初共演となる池松壮亮と伊藤沙莉。共に日本映画界を背負う2人が、どのような掛け合いをみせるのか、注目したい。
佐伯照生(池松壮亮)
怪我でダンサーの道を諦めた男性。ステージ照明の仕事をしている。演じるのは、『君が君で君だ』や、クリープハイプの楽曲『憂、燦々』のMVなど、松居大悟監督作品にも多く出演してきた池松壮亮。
野原葉(伊藤沙莉)
照生の彼女。タクシードライバーとして働いている。葉役を務めるのは、子役からキャリアを重ね、2021年のエランドール賞新人賞、ブルーリボン賞助演女優賞を受賞した伊藤沙莉。
『ちょっと思い出しただけ』の主演を務めた池松壮亮、伊藤沙莉にインタビューを実施。本作では恋人役として、6年間にわたる時の経過をリアルに、高純度に演じきった2人が、どのような思いで撮影に臨んだのか。本作に向けた思いや撮影現場での裏話など、貴重なエピソードを語ってくれた。
池松さんは松居大悟監督の作品に出演するのは『君が君で君だ』以来4年ぶりです。主題歌を歌っているクリープハイプとも久々のタッグとなりますね。
池松:松居監督やクリープハイプとは、僕が20代前半の時にPVや映画作品をたくさん一緒に作ってきました。ここ5年くらいは3者それぞれの道を進んでいて、僕も30代になり……というタイミングで松居監督から『ちょっと思い出しただけ』のオファーを頂きました。
『ちょっと思い出しただけ』に出演するにあたってどのようなことをまず考えましたか?
池松:時代が大きく変わってしまったここ2年は、色々と思うことがあり、どちらかというと海外に目を向けて活動していて。『ちょっと思い出しただけ』の撮影期間も元々はロシア映画の撮影に向かう予定でしたが、その話がコロナによって白紙になって「どうしようかな」と思っている時にちょうど松居さんから連絡を頂きました。
その時にまず思ったのは“20代で3者やってきたことの決着を付けなければいけないな”ということでした。『ちょっと思い出しただけ』のベースになっているクリープハイプの「ナイトオンザプラネット」という楽曲は、“命より大切な子供”“いつのまにかママになってた”と歌っています。パーソナルな視点の現在地から、もう決定的に戻れない“あの頃“、2020年よりも前、平成という時代を明確に歌っている曲だと感じました。そこにはクリープハイプなりの決着の付け方があって、そこにとても感動しました。
“節目”にあたって決着を付ける、ということですか。
池松:はい。個人的な“節目”だけではなく今の時代の変わり目に、この世界の流れの中での“あの頃”に今どう答えを出すのか?ということは映画だけでなく、どの分野に対しても重要なことだと思っています。平成が終わって令和になったこの10年、日本だけを見ても「3.11」に始まり本当に色々なことがあって、人生において誰もがそれぞれ何らかの理由で会えなくなった人がいるはずですし、失った場所や時間がある。誰もが傷ついてきたし、まだ不確かな時代を生きる不安を抱えている。
だからこそいわゆる“あの頃ムービー”もたくさん作られています。自分が完全に落ち着いていて、安心してどこかに属していた“あの頃”を、人は時代の変わり目に思い返すものだと思います。そして今、生きている。生き残ってきた。先は見えないけど長い長いトンネルの先に少しだけ、微かに光が見えるかもしれない。破壊の後は、必ず再生がやってくる。
そういった中で、「“現在やこれからを組み込んだ上での回顧”を描く恋愛映画」という『ちょっと思い出しただけ』の企画に可能性を感じました。「現在地のこれからと、現在地から振り返った回顧」それと「恋愛映画」という2つの要素を組み合わせることで、何か今の時代の空気感に共鳴する作品が生み出せるのではないかと思いました。
あとは、僕自身も影響と恩恵を受けてきたジム・ジャームッシュからのインスピレーションや、人々が映画館に足を運ぶことに対して制約がかかるようになってしまったことによるミニシアターの危機的状況、それから伊藤さんをはじめ、才能溢れる豪華な面々と共演し共闘できることの喜び。色々なタイミングや要素がつながって「今向き合うべきはこの作品だ」と思わせてもらえたと思います。