グッチ(GUCCI)の2020年秋冬ウィメンズコレクションが発表された。これまでメンズ・ウィメンズ合同ショーを行ってきたが、今季は久しぶりのウィメンズ単独ショーとなった。なお、会場にはモデル・女優の三吉彩花も来場した。
毎シーズン、魅惑に満ちた魔法のようなファッションショーを見せてくれるグッチ。今季はまさにそのファッションショーにそのものにフォーカスを当て、「再現することのできない儀式(AN UNREPEATABLE RITUAL)」と題してコレクションを発表した。
インビテーションは、アレッサンドロ・ミケーレ本人による「ショーに来てね」という短いボイスメッセージ。WhatsAppを通して送られてきたこのラフなメッセージが示す通り、今季のショーはまるで彼の仕事場に友人を招き入れるかのようにフレンドリーなもので、ショーの表舞台であるランウェイと、裏側の“バックステージ”を融合させる仕掛けを施した。
会場に到着してゲストがまず通されたのは、なんとメイクアップルーム。真っ白なローブに身を包んだモデルたちと、まもなく始まるショーの準備に奮闘するスタッフ、彼らに声を掛けて回るアレッサンドロ・ミケーレ...。ゲストは彼らと同じ場所に立ち、ショー直前の様子を目にすることができるのだ。
ショーがスタートすると会場中央にメリーゴーランドのように回転するフィッティングルームが登場。ローブを纏ったモデルとスタッフが、ゲストの前で“生着替え”を披露する。
モデルたちに次々と着せられていくウェアは、チェック柄ジャケット&パンツのセットアップやラッフルをたっぷりと重ねたロングドレスなどクラシカルなスタイルがベース。上品な光沢のあるサテンやベロア、レースなどの素材遣いも相まってエレガントな印象を受ける。
ただしミケーレの折衷主義は健在で、ロマンティックなチュールスカートにハードなハーネスをスタイリングしたり、チャイナボタンをあしらったコートにフォークロア調のフラワープリントスカートを合わせたりして、ミックスアンドマッチを楽しんでいる。またひよこを散りばめたセットアップや丸襟のワンピースなど、既に発表されているメンズコレクションと同様に子供服から着想を得たピースも顔を出した。
バッグ&シューズもクラシカルなレザーアイテムが主流。ミニサイズのワンハンドルバッグや、ボースビットをあしらったバッグ「グッチ 1955 ホースビット」の新作、グリーン・レッド・グリーンのウェブ ストライプを配したタッセルローファーなどが、主張しすぎることなく上品な佇まいでルックに馴染んでいる。
モデルたちが役目を終えステージを去ると、裏方に徹していたスタッフたちがゲストの方を向いてポージング。会場からは盛大な拍手が送られた。グッチでデビューして5年、あの手この手でサプライズを用意し、期待に応えてきたミケーレ。今季のショーも既成概念を覆す驚くべきものであるのは間違いないのだが、ミケーレが心から愛する「再現することのできない儀式」=ファッションショーに、グッチを愛するファンを招き入れた飾り気のない等身大のショーにも思えた。
またショーのプロセスを可視化するという行為は、普段ならば埋もれてしまう“裏方の努力”にスポットライトを当てる試みでもあり、共にグッチを作り上げてきたスタッフやモデルに、リスペクトを捧げる意味も含んでいたに違いない。