トモ コイズミ(Tomo Koizumi)の2020年春夏コレクションが、Rakuten Fashion Week TOKYO 2020 S/S3日目の2019年10月16日(水)、表参道ヒルズにて発表された。
衣装デザイナーとして活躍し、ニューヨークでの2019年秋冬コレクションでデビューを飾ったトモ コイズミが、日本で初のショーを開催。その会場に現れたのは“円形劇場”──中央には広場さながらに円形の空間が設えられ、無色透明の椅子がそれを囲むよう並べられた。一旦暗転したのち、白い光と優しげな音楽とともに、ショーは幕を開けた。
披露するのは、小泉が得意とするラッフルをたっぷりとあしらった、いやむしろラッフルで構築されたとでも言うべきドレスピースだ。やや背中の開いたピュアな純白のドレスは、ラッフルで首も肩も埋もれるほどにボリューミー。豊かに広がるスカートは、あたかも1つ1つのひだが膨らんだよう。長く引きずる裾は、ほとんど尾のような存在感を示している。
膨らむのはスカートだけではない。背中にあしらわれたリボン状のモチーフも、これでもかと言わんばかりにラッフルで肥大化された。バックのみならず、フロントも異様に膨らむ。あるいは、スリーブは腕の原型を留めぬほどに大きく、また長くなり、鳥の羽のようにすら見える。丈感の短いドレスに合わされば、身体の元々のシルエットと巨大なスリーブとが怪しげなまでのコントラストを見せる。
ショーが進むにつれ、色合いはますます豊かに。快活なオレンジとイエロー、ミステリアスなパープルにグリーン、ポップでヴィヴィッドなピンクやレッド。多様な音楽に合わせて、それらはさまざまに沸き立つ感情を映し出す。
スカートのみならず、パンツのスタイルもラッフルが咲き乱れて現れる。ピンクのボディにレッドのパーツが垂れ下がる姿は、どこかプレゼントボックスのよう。華やかなラッフル、数多とあしらわれたリボンとあいまり、“ギフト”というテーマが見え隠れるする。そこには、ニューヨークでの初のショーの折りにお世話になった、たくさんの人たちへの感謝の気持ちを込めたという。
モデルは円形劇場の舞台を、練り歩き、かがみ、そして舞い踊る。それに合わせて、豊かにあしらわれたラッフルは風をはらんでふわりと揺れる。あるいは、長いスリーブがひらりと宙に翻る。人元来のシルエットからは離れた“想像的”な見た目であるとはいえ、それらはショーを見る人の目の前にあって、しかもたしかに揺らめいてみせるのだ。
感情というのは、普通目には見えない。けれども劇場こそ、現実とイメージが交錯する場ではなかろうか。身体のうちに沸き起こるさまざまな思い、それらが華やかなラッフルとなって、身体のギリギリ外側へと発露する。この“円形劇場”でトモ コイズミは、不可視の感情を目に見える“かたち”として、たしかに提示したように思える。