アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)は、2019-20年秋冬コレクションを、2019年1月18日(金)にフランス・パリのパレ・ド・トーキョーにて発表した。
今季のクリエーションにあたり、クリエイティブ・ディレクターのセバスチャン・ムニエは原点に回帰。かつてのアントワープの6人“アントワープシックス”を生み出した文化的脈絡を探究する。
イメージソースとなったのは、挑発的で活発なヴィジュアルアートと音楽によるカウンターカルチャーが渦巻き、パンクが人々を先導していた、70・80年代のアントワープ。ベルギーのパンクロックバンド・The Kidsや、デュオのアーティスト・Club Moral、ヨーゼフ・ボイスといったアーティストが活躍を見せていた。
ショーでは、当時の反骨精神に満ちたアヴァンギャルドなエネルギーに、現代的なひねりを加え再解釈したコレクションが展開された。洗練されたシルエットと、折衷されたきめ細やかなディテールが、独自の世界観を見せていく。
特徴的なのは、装飾が施されていても決して過剰に華美にならずに、マイペースなバランス感を保っている点。例えば、ギャザーを施したホワイトのブラウスや、袖にフリルをあしらったベージュのコートは、装飾が服地のドレープ感やラインに呼応しているかのように、ナチュラルに馴染んでいる。それは、いずれもオーバーサイズでありながら身体に寄り添い、しなやかで自然なラインを描くように設計されたパターンメイキングによるものだろう。
オパール加工のブラウスやサテンジャカードのセットアップ、レースで仕立てたドレス、ブラウスなど、優雅な模様も目を引いた。ボリューム感のある襟をあしらったベロアのコートにはペイズリー柄があしらわれ、タイトなレザーパンツに組み合わせたジャケットは、品のある光沢感の花柄ジャカード地で仕立てられている。
アヴァンギャルドなムードは、スモーキーで褪せたような色彩感覚と、型にはまらないデザインによるものだろう。ムラ染めのカモフラージュファブリックは、カーキ、ブラック、ブラウンといった色彩が曖昧に入り混じることでニュートラルな表情を創出。ガウンコートやミリタリーテイストのジャケットなどに落とし込まれ、単色使いよりも奥行きのあるダークさを感じさせる。
ニットウェアは肩から落ちる程に襟ぐりを大きくとり、編地の感覚をバラバラにすることでダメージ感を演出する。魚の網のように穴を開けたブラックのニットに至っては途中で糸が切られており、退廃的な空気感を放っている。