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【インタビュー】ホワイトマウンテニアリング - アウトドアをファッションに

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「アウトドアのコンセプトを持ってファッションの世界に入り込む。」まだ世の中になかったブランドコンセプトを形にし、ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)を2006年に立ち上げた相澤陽介。魅力的なブランドを作り上げた過程や、モンクレールを始め、バブアーバートンアディダス オリジナルスハンティング・ワールドと多くのブランドから依頼を受ける背景に迫った。

ホワイトマウンテニアリング立ち上げまで

ホワイトマウンテニアリング 2018-19年秋冬コレクション
ホワイトマウンテニアリング 2018-19年秋冬コレクション

多摩美術大学ではどのような学生生活を送られましたか?

当時はデザインよりも現代美術に興味があり、彫刻や工芸などの中から表現の1つとして染織を選びました。テキスタイルではありますが、ファッションという考えはその時には全くありませんでした。

また、学生時代は現代美術家のアシスタントをしていました。洋服自体は好きでしたが、都心から離れた八王子のキャンパスで日々制作に没頭していました。

コム デ ギャルソンへの就職を選んだ背景を教えてください。

卒業して就職を意識し始めた時期に、自分が何をやって生きていくのかを真剣に考えました。

大学3年まで現代美術の世界に憧れてテキスタイルを使った作品を作っていきたいと思っていましたが、現実はそんなに甘くはないですし、なんとなく自分には向いていないのではないかと感じていました。もっと大きな心境の変化として、制作するだけでなく、制作した作品を通して社会と繋がることが大事だと思い、デザインに携わることを考え始めました。

僕にとって、ものづくりとはコミュニケーションだったのです。テキスタイルを学んでいた身としては、ファッションかインテリアデザイナーという選択肢が自然に浮かんできました。
そして、就職課で求人を見つけて申し込んだのがコム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)。ファッションデザイナーになりたいという強い思いがあったわけではないので、ここで受かっていなかったらインテリア業界に進んでいたかもしれませんね。

コム デ ギャルソンではどのような経験を積みましたか?

ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソンの中で企画生産部に所属し、その中で主に企画の仕事をしていました。アシスタント業務からテキスタイル担当など関わるパートは多かったです。特に入社してすぐにメンズブランドができ、様々な経験をさせてもらえたと思います。

具体的にはどのようなことをされていましたか?

当時の自分にはファッションとしてのスキルが特別あったわけでは無いので、在籍した約5年間は、どんなことでもやった気がします。

例えば、実際の製造現場まで足を運ぶのが日常でした。僕自身、機械が動いているのを見ながら、どのように作られているのかを知るのが好きでした。商品として使えないと思われ、工場の端に捨てられている布の切れ端に、素材としての面白さを発見して、会社に提案したこともありました。

自分が作ったブランドでは無いわけですが、自分のブランドという気概を持って仕事をしていたと思います。

当時からご自身のブランドの構想はありましたか?

原案はありましたが、ブランドという事ではなかったです。アウトドアブランドが昔から好きでしたし、ローテクな物もハイテクな物も両方興味がありました。当然コム デ ギャルソンで働いていたわけですから、いわゆるモードの世界のファッションにも興味があり、その二つを融合させるというのは必然だったのかもしれません。

当時は全く具体的ではないですが、アウトドアのテイストを取り入れたファッションブランドとしてものづくりをする事は面白そうだと頭の中で描いていました。

ただ、自分のブランドをやりたいというよりは、こういうことをやれば世の中に響くのではないかな…というレベルで、独立してデザイナーになってというようなイメージではありませんでした。

ファッションデザイナーという自負もあるけど、どういうものを自分が作れて、作ったものに対してどのようなリアクションがあって、最終的にどのようなコミュニケーションが取れるかを考えるのが好きでした。

一度は燃え尽きる

自身のブランドを作るために退職したのでしょうか。

いえ、そうではありません。実は、ホワイトマウンテニアリングを始めることとは関係がなく、その前に、コム デ ギャルソンを辞めていました。

仕事も会社も好きでしたし、ブランドで働いている誇りも持っていましたが、自分のキャパを越えてしまい、一種の燃え尽き症候群だったのかもしれません。

今考えると本当に若かったと思います。まあ甘えもあったのではないかなと。
自分自身を一度リセットしたいと思ったのでしょうね。その後ファッションとは無縁の工事現場や運送会社などで1年程度働いていました。地元の幼馴染を頼って、朝一にニッカポッカを履いて現場に行く生活です。

もはやファッション業界とは全然違いますよね。今ではこの期間があって本当に良かったと思っています。

ホワイトマウンテニアリング 2018年春夏コレクション
ホワイトマウンテニアリング 2018年春夏コレクション

再びファッションの世界に戻ろうと思ったきっかけは?

単純に、やはりファッションが好きだったのでしょう。一度は離れた身ですが、昔の縁で、 ファッション関係の仕事が少しずつ増えていきました。何か面白いことをやらないかとお誘いを受けた時、ずっと面白いと思っていた、アウトドアのコンセプトをファッションの世界に持ち込むことを、ホワイトマウンテニアリングとして形にしました。

どのような観点で面白いと感じていましたか?

自分の興味と、世の中に考えたコンセプトを持つブランドがないという点と、両方です。大学でも教えている時に伝えますが、デザイナーがかっこいい、欲しい、可愛いと思っていることを追求するのは当然あります。

でもそれだけでは、足りない。自分のやりたい事だけを考えるというのは、実は楽な事だと思っています。

ものが売れないと言われる時代で、自分が作りたいものと、世の中にアクションを起すためにどうするかの両軸を考える必要があります。

どうしてアウトドアウェアがベースなのかというと、アウトドアの洋服は、素材が進化する中で作るものが現在でも進化しています。例えば、ゴアテックスのような高い耐水圧を持つ生地が昔より軽くなっていて、より軽量で山に登れます。今のサッカーのユニフォームを10年前と比べて見てください。昔のユニフォームは今よりダボっとしているはずです。

ストレッチ性があり、耐久性もある素材が開発されているから、今のタイトなシルエットのユニフォームがあります 。

要するに作り方が日々変わってくるジャンルの洋服なのです。

ファッションの世界にアウトドアを持ち込む

改めて、ホワイトマウンテニアリングとはどのようなブランドか教えてください 。

ホワイトマウンテニアリングは、アウトドアのコンセプトをファッションに融合したブランドです。
「“服を着るフィールドは全てアウトドア”デザイン、実用性、技術の3つの要素を一つの形にし、市場には屈しない姿勢でのものづくり。」というのがコンセプトです。ブランドネームのタグにもこのコンセプトを英語で示しています。

【インタビュー】ホワイトマウンテニアリング - アウトドアをファッションに|写真15

アウトドアのブランドではないのですね?

コンセプトが明確なことと専門的なブランドであることは違います。
同じことを続けていますが、興味があることは変わっていきます。
変わらず興味があるのは、 アウトドアのベースに、ミリタリーやスポーツ、テクニカルな素材という要素を合わせ、ファッションと融合させること。

ブランドとして前に進んでいくために、コンセプト以外のことをシーズンテーマにして、その時々の自分の雰囲気や興味を加え、時代にフィットしていくものを作っています。オリジナルテキスタイルも作りますし、柄やプリントの洋服も作ります。モードではなくリアルクローズですが、このコンセプトで、パリでファッションショーも行っています。

2010年秋冬コレクション
2010年秋冬コレクション

立ち上げた時、直面した困難だったことは何ですか?

全てがゼロベースで、お金がない中、ないなりに工夫しなければならなかったこと。例えば、コム デ ギャルソンで会社員として働いていた時は、必要であれば何度も出張に行き、よい仕事をすることだけを考えていました。

でも自分でゼロからブランドを立ち上げるとなると、アウトプットと同時に、出張にかかる費用まで考えなければならなかった。いくら面白いと思うコンセプトを持っていても、ダメだったらすぐに終わってしまう世界なので、「こういうことがやりたい、それにはいくら費用がかかる」というやりとりをしながら、前に進めていくのは大変でした。

今でも同じような悩みをお持ちですか?

デザイナーはお金のことをわからないといけないと思います。スタッフの経費、宣伝広告費やファッションショーにかかる費用、それらを賄うための売上がいくら必要か。そういう気持ちが凝縮されて、1つの洋服に詰められていきます。

今でもパリでショーを行う会場をどこにするか、スタッフとどのような段取りでパリに入るかも自分たちで電卓を見ながら考えています。

振り返ってみてブランドを続けられている転機はありますか?

2013年に個人として モンクレールWのデザイナーに就任し、同時期にホワイト マウンテニアリングがフィレンツェで行われるPITTI UOMO(ピッティウォモ)のファションショーに招待されたことです。

当時、イタリアのファッション業界は全くの無縁であった中で、同時に二つのオファーがあり、実現できた事はとても大きな事でした。個人としてもブランドとしても評価されたことで、世の中にフィットしてきているのではないかと手応えを感じました。

イタリアでの経験 - 制約がないことが難しい

ピッティウォモで披露した13年秋冬コレクション
ピッティウォモで披露した13年秋冬コレクション

モンクレールWで 得られたことを教えてください。

声をかけてもらったことで、デザイナーと言う仕事は何だろうと見つめ直すことになりました。モンクレールは既にアウトドアの代表的なブランドでしたので、リアルクローズを作っている僕が、何をしなければならないか、僕の持っていることだけで成立するか、考えました。

2013年のコレクションからだったので、実際には1年前の2012年から2ヶ月に一度イタリアに行きました。当時は、トム ブラウンが、Gamme Bleu(ガム ブルー)を担当していて、自分がプレゼンをしている隣の部屋で、彼もミーティングを行っていましたし、物作りのクオリティーや造詣の深さ、仕事の厳しさなど全てが新鮮で、なんだか違うカルチャーに投げ込まれた気がしました。

モンクレールW 2013年秋冬コレクション
モンクレールW 2013年秋冬コレクション

相澤さんに求められたことは何でしたか?

コム デ ギャルソンで働いていた時や、ホワイトマウンテニアリングを始めた時と同じように、面白いと思ったことを考えて形にしてくれという事です。

しかし異なったのは、制約が全くなかったということ。

素材の品質は好きなだけ追求できて、出来上がった洋服の金額のことも制限が全く無かったのです。逆にマーケットの事を考えたアイデアは却下されてしまい、もっと強い物を出して欲しいという感じでした。今までは、何らかの制約がある中で仕事をしてきたのだと思い、制限がないのが逆に難しいと感じました。要求されていることと向き合う中で、自分の中のリミッターを外すことに挑戦しました。

僕自身、モンクレールは時代に必要なことをタイムリーに示しているブランドだと思っています。モンクレールと3シーズンを過ごせたのは、自分の提示したことが、時代に合ってきている証だと思っていたので、必死でしたね。

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