ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)の2018-19年秋冬コレクションが発表された。
“いまの時代のラグジュアリーとは何だろう…。”今季の起点となったこの問いにデザイナー坂部三樹郎が出した答えは、洋服と身体をあえて合致させないことだった。
古くから洋服はボディラインに沿うものが“正解”とされてきた。だからこそ、お金や暮らしに余裕のある人々はオーダーメイドを好み、自分の体に合った洋服を選ぶ。しかし、時代の移り変わりとともに、その考えそのものが変化している。ECサイトが低価格・短納期でオーダーメイドスーツを作るいま、予算に関係なくフィット感のあるものを手に入れることができるようになった。
ならば、ファッションブランドは反対に舵を取ったら面白くなるんじゃないだろうか…と坂部三樹郎は話す。肩にテキスタイルをひっかけて“骨で着る”平面的な和服、身体に沿わせる“肉で着る”立体的な洋服。どちらにも属さない、立体的なのにボディに沿わない、新しい洋服の形を追い求めた。
ルックを見渡すと坂部の言葉を体感させられる。コート、ジャケット、シャツ、そのどれもがボディと洋服の間に不思議な間を持つ。パットのついたショルダーもパフスリーブにした肩周りも、肩の高い位置からは大きく外れた肘上に移動。また袖を通すと、肩の先は横を向くのではなく、くるりと振り返るようにして前を向いていることもわかる。アーム周りは、人間の可動域は無視されていて、つったような窮屈そうなフォルムになっている。
身頃もストンとした落ち感は全くない。着物のように重なりあっていて、両端がどちらも奥へ奥へと進んでいるように内側に深くクロスしている。
見たことのない変形したフォルム。その上にネコの刺繍が散りばめられた小花柄のテキスタイルなど、ロマンティックな生地がのる。可愛らしい女の子、華やかなフラワー。そういったフェミニンなモチーフがのったゴブラン織風のテキスタイルは、実は日本の企業とともに作り出したプリント地。インクジェットプリントで様々なモチーフが、繊細に描かれ、新しい形の洋服の中で存在感を発揮している。