ヒロコ コシノ(HIROKO KOSHINO)の2017年秋冬コレクションが、2017年3月21日(火)恵比寿ガーデンホールにて発表された。
テーマは、”デカダンス”。「退廃」とも訳されるその言葉は、現実の価値から離れ、時には不協和音を奏でるような脆さを垣間見せながら、象徴的で美しいものを追求する精神を表す。そんなテーマの通り、コレクションは独創的な造形と色彩が幻想的な世界を作り出し、夢の中のように少し不思議で美しい物語を紡いだ。
会場の緊張感を煽るようにドラマチックなピアノの音色が鳴り響き、ショーが幕を開けた。まず繰り広げられたのは、灰色や白、黒などの禁欲的なカラーパレットで構成されるルックだ。ニットからパンツ、コートまでグレー1色でまとめたスタイルや、三角やドット柄を全身に細かく敷き詰めたモノクロのドレスが視線を奪う。時折、ディテールに鮮やかなオレンジやブルーを忍ばせ、ハッとするような色彩の効果を誘う。
シルエットは、ゆったりとエフォートレスに。ドレープなどが織りなすグニャリとうねるようなフォルムが不安定さを感じさせる。グレーのニットは、肩をカットし、切り口にだらりとドレープを施し、裾はアシンメトリーに仕上げた。また、そんなフォルムと共鳴するように、重ねられたシルバーのネックレスやイヤリングが波打つようなユニークな線を描く。
突然、曲調が生き生きとリズミカルなものに変化し、今までの退廃的なムードを覆すような鮮やかな色彩のルックが展開。グリーンやブルー、オレンジといったエネルギッシュなカラーが大胆に組み合わされ、現実離れしたような神秘的な印象を与える。
爽やかなグリーンのトップスに大きくあしらわれたフリルは、先ほどまでのダラリと崩れるようなものとは打って変わり、それ自体が自立しているような立体的で有機的なものに。ヒダの内側から異なるカラーを使用し、それがちらりと覗くことで、よりリズミカルさを際立たせる。
そしてショーの終盤は、まるで星が輝く夜空を想起させるようなロマンチックなルックが登場した。テーラードが美しいジャケットには、真っ黒の生地に、ストーンを散りばめたゴールドのラインが浮かぶ。裾からはキラキラとグリッターがきらめくチュールをなびかせ、かっちりとしたスーツとのコントラストを生み出した。