ロンドンで活躍するデンマーク出身のデザイナー、Peter Jensen(ピーター・イエンセン)。キャッチーなグラフィックや刺繍が施された、独特の世界観で展開されるユーモア溢れるキュートで個性的なデザインで世界中で愛されているブランドだ。今回、そんなピーター・イェンセンがブランド創立10周年を記念して、アニバーサリーブック「Peter Jensen &...」を出版し、2011年11月29日には、ピーター本人が来日し、「Peter Jansen's Muses(ピーター イェイセンのミューズ達)」と題したイベントを行った。
ブランドの歴史が集約されたこの本には、彼のコレクションのミューズとして登場するジョディー・フォスター、ローリー・シモンズ、アンナ・カリーナら実在の人物や、想像上のキャラクター達が登場。実在・非実在の狭間を行き交うモチーフを落とし込んだデザインは自然とズレを生み出し、そして作り出されるのはアヴァンギャルドでもなく、けれどもどこか変な服。そんなコレクションをインスピレーション源と共にスクラップブックのように賑やかに本の中に閉じ込めたのは、ピーターの友人でもあり、KITSUNÉ(キツネ)に参加していることでも知られる世界的に有名なデザインチーム「アバケ(Åbäke)」だ。
イベントではこれまで発表されてきたアーカイブが25体のスタイリングで展示され、壁には今までのコレクションのインビテーションが飾られた。さらに日本のMEDICOM TOY(メディコムトイ)のテキスタイルブランド、FABRICK®と コラボレーションしたステショナリーグッズも披露された。このコラボアイテムには、ブリーフケース、アイフォンケース、ペンケース、ポーチ、カード ケース、ブックカバーなどがあり、アニバーサリーブックのカバーと同じ、ブランドアイコンのウサギ柄。これらはJR大阪三越伊勢丹と新宿伊勢丹直営店にて2011年11月29日より先行発売され、来年には全国で展開予定となっている。
また、ピーターはスペシャルインタビューにて、デザインパートナーであるジェラルド・ウィルソン(Gerard Wilson)と共に10周年を迎えたブランドへの想いやこれからについてを語ってくれた。
ピーター(以下P): 僕は4回目、彼(ジェラルド)は3回目。
ジェラルド(以下G): でも僕らが最後に来たのって2006年じゃなかったっけ?もう5年前。時が経つのは早いですよね。
G: ビルもたくさん建ったし、東京はいろんなことが同時進行していて忙しい街だってイメージがありますね。来日するときはいつも予定がいっぱいで忙しくてあまり見て回れないのですが、渋谷の交差点とか街のいたる所にあるスピーカーから聞こえてくるVOICE(声)が印象的です。
P:日本ではいろんな所でアナウンス放送があるし、スクリーンの広告からも映像と音が流れているし、それにキャッシュマシーンまでしゃべる!ロンドンの街中では車の音とか話声とかは聞こえてくるけど、そういう”声”はないですからね。
P: Greatだった!とっても楽しかった。沢山の人がインタビューに来てくれて、本に僕のサインをもらうのに長い行列が出来たんです。だから僕、ずっとしゃべりっぱなしでした。
P: 実は今年の8月にデンマークのDesign Museum Denmarkでブランド10周年記念の回顧展を開催して、コレクションごとのスタイリングをピックアップして展示しました。
そして11月にはロンドンのV&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館)のイベント「Fashion in Motion」(注: イギリスのアレキサンダー マックイーン、ヴィヴィアン・ウエストウッドを始め、ガレス ピューやゴルチエ等世界的に有名なブランドが一般客向けにショーを行うイベント)ではアーカイブと最新コレクションをミックスして55体のスタイリングを作ってショーを実施しました。
会場の雰囲気とか、それに僕らが伝えたいメッセージは何かとか考えながらコレクションから選びだして行くのは大変なのですが、その2回がいい練習になりました(笑)。いくらでもスタイリングを考え出せるようになっていた自分達には驚きでした。
過去のアーカイブの中にはいいものも悪いものも、今見てもモダンなものもあって、そこから次の未来へのインスピレーションがわいてきた。それに、これら3回の企画を通して、ピーター イェンセンというブランドとしてのクリアなメッセージと、それを伝える術を身につけることができたと思います。
PG: 早かった、すごく早かったです。
G: ずっと小休止してる暇すらなくて、過去を振り返る余裕もありませんでした。今こうしてアーカイブを展示したり、本を出版したり、この10年についてのインタビューを受けたりする機会に恵まれたことは、次の10年を続けていくためのいい出発点になったと思います。
P: アートスクールではクエリエイティブなことは勉強できたのですが、ビジネスは教えてくれなかった。だから卒業してブランドを始めたとき、服は作ることができたけど、ビジネスについては知らなかったから独学で必死に勉強しました。
G: どんないいいデザインでも生産できないものだったりするから、デザインと生産の関係を考えながらやるのも難しかったし、市場のことを考えたり、ブランドに関してどの分野にフォーカスしたらいいか見極めたりするのも難しくて。振り返るととにかく10年間鍛えられ多と思います。
P: そして今、それらをうまくマネジメントできるようになって、改めてクリエイティブなことに一番フォーカスできるようになりました。スタイルを確立できたってことだと思います。あとは、いろんな人がいろんなアドバイスをくれるのですが、最後は自分を信じる事だってことを学びました。これが一番重要なこと。
P: 人生の中の一瞬をひとつだけ選び出すって難しいから、たくさんあります。まず、今回本を出せたことはとても光栄に思う。今、ブランドの方向性が見えてきたし、メッセージもクリアになって、未来が明確になったと思います。
G: でも必ず最新のプロジェクトがいつも頭の中で一番のところにあるんだ。エネルギーも情熱も注いで没頭してる。そうそう、「Who’s Who in Denmark(注:著名人のデータが掲載された権威ある紳士録のデンマーク版)」にピーターが選ばれたんだ!もう有名人(笑)あとは、2010年秋冬コレクションをニューヨークで発表できたのも嬉しかったです。大好きなバンドのカーディガンズ(The Cardigans)の二―ナの生の歌声をバックにショーをしたのが思い出。それに、2009年グリーンランドにリサーチ旅行したも楽しかったですね。
P: そういう瞬間瞬間もあるけど、何よりも街で自分のデザインした服を着てる人を見かけるのが一番嬉しい。それから、母校であるセントマーチンズで9年間講師をやってこれたのもいい経験だでした。ただ、今若い学生達を見ていてとても不安に思うことも。なんていうか、彼らの視野が狭くなってる気がするんのです。
G: もっと好奇心を持ってオープンマインドでいてほしいですね。
P: 何か残るもので後から見直せるものにしたかったん。それに、本だったら5年後にセカンドエディションを作ったりしてどんどん足して行けるし。この本は僕らの10年間のダイアリーで、スクラップブックです。
G: グラフィックデザイナーのアバケ(Åbäke)は10年来の友達だから、彼らと一緒に何かしたかった。僕らのミューズ達にフォーカスするってコンセプトは僕らで決めましたが、彼らのクリエーションが大好きで、他はおまかせしちゃっいました。思った通り、素敵な本に仕上げてくれたのですけどもね。
P: 10年後もまだブランドが続いているといいな(笑)。今まで自分達自身に対して素直に活動してこれたから、今後も同じように続けて行きたいです。そして、ピーター イェンセンの世界観をもっと広げて行きたいですね。
コラボレーションももっとやりたいし、いつかお店をオープンしたい。そのお店には、オリジナルアイテムだけじゃなくセレクトアイテムも並べて、ウインドウをアーティストにお願いしたり、いろいろ考えています。だからこれからも期待してくださいね。
【10周年アニバーサリーブック詳細】
Peter Jensen &...
価格 : ¥3,990(税込)
取り扱い店 : UTRECHT(ユトレヒト) TEL : 03-6427-4041
Interview and text by Hamae Yamamoto