2011年11月20日、タカヒロ カワグチ バイ アトリエターナ(Takahiro Kawaguchi by atlier. Ta. a. Na)が2012年春夏コレクションを発表した。
テーマは移民。1948年に始まったゴールドラッシュでは、夢と希望が詰まったボストンバッグをひとつだけ持って、多くの人々が新境地アメリカへと向かった。だが、アメリカで彼らを待ち受けていたのは、炭鉱・港湾・建築現場・農園などでの重労働と、夢とは程遠いとても貧しい生活だった。
服さえもまともに買うことが出来ない移民達のファッションは、サイズが合わなくなってしまったジャケットは小さすぎるし、おさがりのパンツはぶかぶかだ。けれど、6種類の異なるトーンの凝ったパッチワークや、カラフルなステッチ、ウエスタン風デザイン、そしてアイディア満載のスタイリングで思いっきりおしゃれを楽しんでいる。擦り切れてしまった裾も、フリンジのようにワンピースをキュートに 彩ってくれる。
ボロボロになればなるほどかっこよくなるデニムやレザーの特性に強く惹かれていると語るデザイナーがメインの素材に選んだのは、6種類の異なるトーンのデニムとコットン。春夏である今季は、泥染めのコットンをしようすることでレザーの風合いを出した。潔く、拘り抜かれた素材選びで勝負した。
硬く素朴な風合いのデニムアイテムが続く中に、優しく揺れる花柄プリントや、ゴールドのチェーンがからまるボーダー柄を取り入れながら、ポジティブ精神で助け合いながら少しずつ富を築いていく移民たちのサクセスストーリーが展開された。
ラストルックは大きなフリルがドラマティックなロングドレスにマニッシュなトレンチコート。ボストンバッグを手に持って、華やかなコサージュが付いた帽子を目深にかぶれば、ハッピーエンドへと向かう移民たちの旅はまだ続いて行く。