プラダ(PRADA)は、2016-17年秋冬コレクションを、イタリア・ミラノで発表した。マリンの要素をベースにしつつ、フードや襟、カフスといったパーツを解体、再構築し、プラダらしい新鮮さに満ち溢れた新しいメンズスタイルを提案している。
まず言及したいのは、首回りのパーツの独立性についてである。1920年代までシャツの襟は取り外しができるアタッチト・カラーだったが、ミウッチャはそれを復刻させつつ、襟に新たな役割、すなわちアクセサリーとしての職務を与えている。それは、シャツの前立てやシャツに巻くはずのネクタイ、袖元のカフスも同じで、それぞれが独立した存在として輝きを放っている。
また、コートのフードは、身頃の素材や質感とまったく連動性のないものが取り付けられている。その後ろ姿を見ると、バックスタイルを演出する小道具としてのフードの役目を提示された気がして、ハッとさせられる。マリン風のコートの襟も取り外し式で、ノーカラーで着ることもできるし、ショーのように片方だけを留めて、ヌケ感を演出することもできる。さらには、ムートンコートの胸元だけを切り取ったようなものさえある。
港湾労働者を連想させるラギッドな素材使いも、今回のコレクションの特徴のひとつ。ハーレー乗りのバイカーが着るような、プルオーバーのレザーシャツは、胸元を紐で止めるようになっていて、腕の屈曲部や切り替えの端の部分にはリアルなユーズド加工が施されている。ヴィンテージのエンジニアブーツなどで“茶芯”と呼ばれるような、黒の下から茶色が浮かび上がるような色合いは、惚れ惚れするくらい見事なものだ。
カーハートのブラウンダックのような素材のダブルブレストのコートは、洗いをかけて縫い目のアタリを出したあとに、上から茶色の塗料を吹きかけたと思われる。同素材のパンツは膝から下に別布を張ってダブルニー仕様になっている。
パンツのシルエットは、総じて太めでアメリカのワークパンツを洗練させたような雰囲気。丈はクロップド丈に仕上げて、白のくしゅくしゅソックスを合わせている。靴は60年代風のセミスクエアトゥのキルト付きのモンクストラップ、先端のみが別色(ブラウンにトゥはイエローなど)のストレートチップ、ソールとアッパーが一体になったような白のスニーカーなどで、相変わらず選り取りみどり。
小物使いでは、ベレーとナース帽の中間のような白い帽子、ベルトループへのキーの重ね付けが、スタイリングを引き締める絶妙なスパイスになっている。色はネイビー、ブラック、グレー、ホワイト、ブラウンが主体だ。
前半で見せた開襟シャツに描かれたイラストは、誰の作品かは現時点では不明だが、様々な立場の人や神様が争っていたり、髪の色の違う男女が愛し合っていたりする。世界で起こる問題へのミウッチャのメッセージとも読み取れるが、かの女が服の解体・再構築に挑んだように、世界はそういう時期に差し掛かっているのかもしれない。3ルック目の人種の違う男女の愛が描写された開襟シャツのように世の中が進むことを願ってやまない。
TEXT by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)