映画『パパが遺した物語』が、2015年10月3日(土)より、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国の劇場で公開される。
父と息子の絆を描く『幸せのちから』のガブリエレ・ムッチーノ監督がNYを舞台に描く本作。トラウマを克服しようとする少女の成長物語を通して、父と娘のかけがえのない絆を描くヒューマンドラマだ。主人公・ケイティを『レ・ミゼラブル』のアマンダ・セイフライドが、小説家だった父のジェイクを『グラディエーター』でアカデミー賞を受賞した名優ラッセル・クロウがそれぞれ演じる。
映画は、父娘が寄り添って暮らした大切な日々が描かれる80年代と、愛を見失い空虚な日々を過ごすケイティを描く現代、2つの時代を行き来しながら描かれる。監督のガブリエレ・ムッチーノは本作について「物語の構成が工夫されているおかげで、波乱の親子関係の影響がよく分かる」とコメント。また、幼年期のケイティを演じたカイリー・ロジャーズは、「ケイティは大人になって学ぶの。人を信じ愛することを。彼女が愛した人が残してくれた思い出のおかげでね」と解説している。
自分の命が残り少ないと知っていた父と、母に続いていつかは父もいなくなることを恐れていた娘。時を超えて娘を見守り続ける父の大きな愛が、カーペンターズの名曲「Close to You」と共に、観る者の胸を強く切なく締め付ける。
映画公開に際して、主演のラッセル・クロウにインタビュー。映画の舞台裏から、自身の親子関係まで話を聞いた。
映画のプロダクトプレイスメント(広告の一種)に関わっていた知人の女性から、この脚本について初めて聞きました。彼女から送られてきた脚本を読んだんです。心が引き割かれるようでした。1時間くらいかけて読んだのですが、涙が溢れました。そう、感情の旅でしたね。
感動した脚本は引き受けると決めているんです。これには製作過程をリスペクトするという意味もあります。たとえ素晴らしい監督が指揮を取っていたとしても、感動を覚えないものは断ります。もともと、パっと読んですぐ電話で断るつもりでした。でも、とても美しく書かれていると思ったし、組み立ても素晴らしい。プロジェクトに感情移入してしまえば、(映画を引き受ける)決断は早いですね。
精神が浄化される(カタルシスを得る)ような思いでした。この映画を見て、何も感じずにいることはとても難しいと思います。
私の友人で、映画を見た人たち、とくに女性たちからは「精神浄化される」とよく言われます。他人のストーリーを見ているわけですが、自身の父親との関係や経験を思い出させてくれます。
気に入ったシーンはたくさんありますが、アマンダの役が酔っぱらいながら、父とともに過ごした日々を思い出すところでしょうか。バーのジュークボックスの前で泣き崩れるシーンは、思い出すだけでも鳥肌がたってしまいます。
ケイティの幼少期を演じたカイリー・ロジャーズの演技には感動しました。素晴らしい女優さんですね。
カイリーは感情的にとても落ち着いている子で、毎日のセットでは笑いが絶えず、とても楽しかった。そうえいば彼女に一度だけやられたことがありました。セットで声をかけると、どうしたのかとても物静かで、どうにか彼女からリアクションを取ろうといろいろ試したんです。結局、理由は映画の役柄に入り込んでいただけだったのですが、真剣そのものでしたね。誰とともに仕事をしていても、その人がエネルギッシュであれば、楽しく過ごせる。カイリーはいつも準備万端で、役柄に入り込んでいました。
気に入ったシーンはたくさん頭に浮かびます。彼女と一緒に歌を歌うシーンがあるのですが、短いシーンであるものの、父と娘の間に生まれた絆から、想像していた以上に重要なシーンになりました。
撮影中もそうでしたが、カメラが回ってないときもそうでした。娘役をしたカイリーと同じ年齢の子供がいるので、彼女とともに過ごし、信頼関係を築きあげるのはリアルで、それが映画に映し出されたと思います。
この4年間、海外で過ごすことが多く、息子たちと過ごす時間がとても貴重でした。彼たちに人生のアドバイスをこめた歌を作ってあげたのですが、彼らが理解するには20年は早いと、演奏しながら気づきました(笑)
我々親がいなくなってしまったときのことを、時間をかけて計画はできますが、実際にはいなくなる前からいろいろ伝わっているんです。子供たちの心にいろいろ埋め込んであげることは、日々できること。だからできる限り、彼らに時間を使いたい。そうすれば、将来なにかあったときに、昔教えたことを思い出してくれるはずです。良識で、優しい心をもった男性に育てること、それが私の目標ですね。
耳が遠くなっていますし、冗談も古いですが、幸い父はまだ健全。父との思い出はたくさんあります。
今となっては理解できますが、父の物事の解決能力や想像力の源は、お金がなかったというところに辿りつきます。
子供の頃のことで、鮮明に覚えていることがあります。周りのみんながクリケットバットを持っていたのに、私はもっていなくて、学校ではバットを借りることができましたが、週末に遊ぶことはできませんでした。そんなとき父が8年もののクリケットバットをガレージセールで、数ドルで購入してきてくれた。リンドシードオイルを塗り、スポーツ店で25セントくらいのスポーツテープを購入し、グリップに巻いてくれました。まるで新品のように生まれ変わったバットを私はとても気に入り、中学生くらいまで愛用していましたよ。
大人になってから振り返ると、それが唯一の解決方だったことがわかりました。バットがほしいから買いにいくということができなかったわけですから。
日本には何度も行ったことがありますが、毎回興味深い経験をしています。その経験から言えるのは、日本の人々は感情的なストーリー、特に家族を題材にしたストーリーに反応し、喚起してくれると思うんです。別に映画を過大評価するわけではありませんが、素敵な作品なので、ぜひ見てください。
■ストーリー
小説家のジェイクは、溺愛していた7歳の娘ケイティと引き離されてしまう。交通事故を起こし、同乗していた妻が亡くなり、ジェイクも 入院することになったのだ。7カ月後に退院したジェイクはケイティに、これからは「ずっと一緒」と約束し、自分と娘についての物語の執筆を始めるが。 20年後、大学院で心理学を学ぶケイティは、悲しい経験から人を愛することができなくなっていた。そんな時、ジェイクの小説を敬愛する作家志望のキャメロ ンと出会い、恋におちる。ケイティは過去と向き合い、新しい人生に踏み出そうとするが──。
次第に明かされていく、あまりに純粋な父と娘の物語。そして、ケイティに遺された、父の最後の小説とは。
【作品情報】
『パパが遺した物語』原題:Fathers and Daughters
公開日:2015年10月3日(土) 新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国の劇場で公開
監督:ガブリエレ・ムッチーノ『幸せのちから』
出演:ラッセル・クロウ『ビューティフル・マインド』、アマンダ・セイフライド『レ・ミゼラブル』、アーロン・ポール、クヮヴェンジャネ・ウォレス、ダイアン・クルーガーほか
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