ラッド ミュージシャン(LAD MUSICIAN)が2015年春夏コレクションを発表した。ブランドが20周年を迎える、今季のタイトルは「MINIMAL ART ROCK 20 -SPACEMEN-」。まだ人々が夢見ていた時代の宇宙がテーマとなった。ベン・フロスト(BEN FROST)のアルバム『AURORA』や陶芸家ハンス・コパーの作品、ピーター・ハイアムズ監督の映画『CAPRICON ONE』がインスピレーション源となっている。
ショーの見どころは、デザイナー黒田雄一が最も敬愛するミュージシャンである、ソニック・ブーム(SONIC BOOM)とのコラボレーションだ。観る者に解放感を与える即興演奏のスペース・ノイズのライブパフォーマンス、空中を漂うレーザーとスモークによる異次元世界の演出など、会場は幻想的なムードでいっぱい。また3Dの球体やオプティカルアート映像で、これまでにはない実験的な宇宙空間を再現していた。
演出だけでなく、アイテムもまた貴重なコラボレーションが実現した。80年~90年代の音楽シーンに多大な影響を与えた、ソニック・ブーム率いるイギリスのサイケロックバンド、スペースメン3(SPACEMEN 3)のバンドの象徴となるトライアングルロゴをはじめ、当時のアートワークや資料をもとに制作したグラフィックは、Tシャツやスウェットなどにプリントされている。また現在も活動を続けているバンド、スペクトラム(SPECTRUM)の初期ジャケットも用いられている。
その他のアイテムも、今季のテーマ性を物語るものばかり。実際に宇宙博へ行ったという黒田は宇宙服から着想を得たデザインを、ディテールやカラーを用いて表現している。ハンス・コパーの作品からヒントを得たというデザインは、衿やフードが後ろ前逆のディテールが特徴的だ。後半に連なって登場したルックは、ステンカラーコートやジップアップブルゾン、ニットやTシャツ、ワイドパンツまですべて白で統一。“スペースホワイト”と名付けられたこのカラーは、グリーンやグレーを含む絶妙な色合いが、その名の通り、まさに宇宙服を思い出させる。
パレットはこのスペースホワイトのほか、ブルーやレッドもキーカラーに。薔薇の花をぼかしてインクジェットでプリントしたパンツやフーディは、そのアブストラクトな仕上がりがブランドらしい一着。また所々でチェック柄も登場し、Tシャツにネルシャツを羽織ったり、ナイロンのプルオーバーを銀河プリントのパンツに合わせたりしていた。
本コレクションについて黒田は「SONIC BOOMと一緒にコレクションを行えたことが嬉しい。本当にファンなので」とショー後にコメント。ブランドをスタートする以前より聴き続け、影響を大きく受けたミュージシャンだけに今回のコラボレーションの実現は本当に喜ばしいものだったことが伺える。またブランド20周年を迎るにあたって、当時と今の若者のファッションの変化について尋ねられると「それを考えると、ものを作れなくなってしまうので、あまり深く考えないようにしています。自分たちの作りたいものを作っています」と話していた。